Fuji Rock Festival '01 Summary フジロックフェスティバル'01を総括する
5年目のフジロックフェスティバル。3度目の苗場。個人的には、いろいろな意味であの嵐の第1回を思い起こさせるフェスになりました。あの惨劇からここまで来たんだなあ。よかったなあ。・・・もちろん何もかもが完璧ということはなく、まだまだ問題は残っています。ここでは今年のフジロックの良かった点、改善すべき点を検証しようと思います。もちろん私の独断と偏見によるものです。 |
1. 会場 | 苗場スキー場は快適だったのか |
今回初めて参加する人も多かったようで、場内は連日すごい人の多さだった。が、特段大きな混乱になることもなく、4日間無事に進んだと思う。ホワイトステージとフィールドオブヘヴンのステージの向きが99年のときと同じに戻された。個人的には見やすい方に戻ったと思っていて、これはよかったと思う。レッドマーキーは、今年は鉄骨でできた巨大な倉庫のような建物になり、そして晴れて屋根の色もレッドに。昨年のテントのときは日中風が抜けず蒸し蒸ししていたが、今年はそうした不快感もなかった。 今年はキャンプサイトにシャワーやお風呂の設備も用意された。他にも親子連れの参加者を考慮しての子供が遊べるエリア"Kids Field"、"The Palace Of Wonder"でのサーカスや"Rookie A Go Go"など、メインの4ステージ以外も充実。催しに幅ができ、懐が広がったように思う(ただ個人的には・・・これはコストのところで書きます)。 トイレの数が前年より増えることはなかったけど、そこはスタッフの配慮によって大きな混乱になることはなかった(詳しくは仕切りのところで書きます)。強いて難点を挙げれば、2日目以降砂埃がひどかったことくらい。今年はステージからの放水が少なかったように思うのは私だけかな?来年の開催場所はまだ未定のようで、どうやら苗場も含めて再検討する様子だ。会場としてだけならこのまま苗場でもOKだと思う。 |
2. 仕切り | 主催者の手際はよかったのか |
今年は前夜祭のときにチケットとリストバンドの交換を受け付けていた。そして入場時はスタッフがリストバンドに交換済みの人は列に並ばなくてもOKという呼びかけをし、無駄な列ができることはなかった。トイレもすのこが置かれ、スタッフがまめに水やトイレットペーパーを補給。つまって使用禁止になったトイレはほとんどなかった。こうしたスタッフの尽力の結果、並んでもそれほど待たなかったというのが実感。 オアシス入り口には総合案内のブースが設置。出演者のキャンセルや入れ替え、時間の変更などが逐一掲示板に貼り出された。もちろん例年通りステージからの呼びかけもしていたけど、こうした情報が行き渡るような配慮はすべきだと思っていて、よかったと思っている。 |
3. ショップエリア | 食事やグッズ売り場はどうだったのか |
ワールドレストラン等、ショップエリアは今年も充実。人の多さの割にはそれほど混まなかったと思っている。各テントの配置は前年より微妙に変わり、今年は岩盤やライジングサンのブースもあった。Wowowのブースでは、各ステージのライヴをリアルタイムでモニター中継していたようだ。 グッズ売り場は入場ゲート手前にフジロックオフィシャルものの売り場が一箇所。そして場内、グリーンとホワイトの間にアーティストものの売り場が一箇所でこれは例年通り。これについては言いたいことが山ほどある。特にアーティストものの方は、テントの数が絶対的に足りない(4つ)。待つ方は最低でも2時間半以上暑い中を立って並ばなければならず、一方の売る人もほとんど休む間もなくフル回転で稼動していて、見ていてとても気の毒に思った。年々出演アーティストの数が増え、それに比例してTシャツの数も増えていっているというのに狭いテントの中でばたばたしていて、売る方も買う方も混乱。結果、1人の人が選び始めてから買い終えるまでに、30分は費やしていたと思う。 会場内のグッズ売り場は最低でももう1箇所以上設けるべき。そして、どんなアーティストのどんなグッズがあるのかを事前に知らせられないだろうか。オフィシャルサイトで事前に掲示しておくとか、入場時の首から提げるプログラムに掲載するとか、あるいはテントで長い列を作って待っている人にグッズを掲載したビラを配布するとか。私もそうだったけど、待っている人はどんなグッズがあるのかが実際テントの中に入って自分で見て確認するまでは全くわからない状態。しかも、そのテント内は無数のTシャツがところ狭しと並べられていて、非常にわかりづらい。並んでいないアーティストはグッズとしてあるのかないのかも不明で、そのため売る人に尋ねなければならないし、聞かれた売る人の方はそれでまた中を駈けずり回らなくてはならない。非常に非効率的だ。 |
4. コスト | チケット代や交通費について |
1日券で14,500円。3日通しで38,000円。これは去年と同じ値段。今年はサーカスなどステージの数も増えて盛りだくさんだったが、逆に言えばステージの数を減らしてチケット代を下げることはできないのだろうか(できないから増やしているのか?)。フジロックで用意されたステージの数は多過ぎるのだ。メインとなる4つのステージでも、満遍なく多くのアーティストを見た人って、いったいどれだけいるのだろう。この代金はまだまだ高いし、参加者としてこれに慣れることはない。慣れてはいけないと思っている。フジロックって、お金持ちのためのフェスティバルじゃないんでしょ? 私は今年、ツアーセンターに申し込んで苗場プリンスホテルに宿泊。朝食つきで1泊1人15000円。部屋は棟にもよるのだろうが、私が泊まった5号館のツインはシングルなみの狭さで、そこにベッドが2つ並べられていてとても窮屈だった。電話と冷蔵庫の使用を不可にしているのはチェックアウト時の精算処理をなくすためだと思われるが、ろくにサービスをしないのなら代金はもっと下げるべきだ。 宿泊の申し込みは個別にホテルや旅館にTELして申し込むこともできるのだけど、ツアーセンター経由では料金が軒並み割り増しになっている。主催者の意図でもあるのか、それとも地元が色気を出し始めているのかわからないが、そこそこ人が集まるとわかった瞬間に手の平を返して商売っ気を出されるのは非常に不快だ。 |
5. マナー | 参加する側の意識について |
私が体験した範囲の中でいうと、必ずしもマナーのいい人ばかりではなかったように思う。グッズ売り場に知らん顔をして割り込みして来る奴がいて、私は自分の前には絶対入れさせまいと頑張って押しやったけど、もう一歩踏み込んだ対処をすればよかったかもしれない。係の人を呼ぶとかその人に説教垂れるとか(笑)。 あと物凄い多かったのが、ライヴ演奏中のステージ、アーティストをカメラで写していた人。フジロックではカメラ自体の持ち込みは禁止しておらず、共に参加した仲間や、会場内外で運良く出会えたアーティストと一緒に記念写真を撮るというのも楽しみのひとつなのだけど、演奏を写すのはアーティストが許可していない限り禁止のはずである。なのに、あからさまにカメラでパシャパシャやっている人があまりにも目立ち過ぎた。あれグリーンならともかく、他のステージだとスタッフだけでなく、演奏しているアーティストにも間違いなく見られてると思うんだよね。あのありさまだと、来年以降カメラの持ち込みそのものが禁止にされても文句は言えないと思う。一部のルールを守らない人のためにこういうことになってしまっては、とても残念だ。 |
6. ラインナップ(1) | 豪華メンバーの功罪?入場規制も発生 |
去年は寂しいラインナップになったと書いたけど、その反動なのか何なのか、今年はすごかった。グラストンベリーフェスが中止になった影響もあるのかもしれないが、各日各ステージとも充実していて、これも私にとっては第1回のフジロックを思い起こさせる要因のひとつになった。 今回も1度発表されながらもろもろの事情でキャンセルになったアーティストたちはいた。デフトーンズ、リッキー・リー・ジョーンズ、ミューズ、アット・ザ・ドライヴ・イン、オウテカ、砂原良徳・・・。主催者は代替としてエイジアン・ダブ・ファウンデーションやオービタルをブッキングするなど、それなりに頑張ってはくれたと思う。これはたくさんのアーティストが出演するフェスティバルにはつきものなのかなあ。 そして残念な出来事もあった。各ステージで入場規制がかかったこと。私がわかっているだけで2日目ホワイトのニュー・オーダー、3日目レッドマーキーのUAだが、他にもあった様子だ。グリーンとホワイトの間の林道にはチケットをチェックするゲートがあって、ホワイト方面で入場規制がかかるとそこでシャットアウトされた。 全ての人がアーティストを見ることができない場合があります。ご理解お願いします
これがスタッフのアナウンスだったが、これにはほんとうに腹が立った。出演アーティストの人気や実績からそれに見合ったステージを用意するべきだと思うし、それをしなかったあげくにこんなことを言うなんて。高いお金を払わせといて、見たいアーティストが自由に見れないなんて、そんなばかなことがあっていいのか。 2日目はナンバーガールとスーパーカーとイースタンユースがほぼ同時刻に別々のステージで演ることになっていて、わざとなのかなんなのか、なんでこうしたのか理解できない。これらのアーティストはファンがかぶっているし、どれも見たい人は多かったはずだ。かろうじてイースタンユースのスタート時間を10分遅らせるという処置はしていたものの、そんな中途半端なことをするくらいなら、はじめから3つのバンドをグリーンで演るようにすればよかったのに。私がステージの数を減らしてチケット代を下げるべきだと思うのは、今回こうしたこともあったからだ。 |
7. ラインナップ(2) | 新人から超大物まで充実。ベストアクトは誰だ? |
今回はベストアクト、及びフジロックを象徴する「うた」をひとつに絞るのは到底不可能と判断し、私が実際に観たアーティストを以下のように振り分けてそれぞれについてまとめることにします。 【UKギターバンド】 トラヴィス/マニック・ストリート・プリーチャーズ/オアシス/ステレオフォニックス いずれも本国ならばフェスのヘッドライナーを飾っても不思議のないバンドばかりが揃った。演奏の精度においてはどのバンドも高かったと思うが、個人的にはマニックスがベスト。2年半前の来日公演では聴けなかった曲も聴け、終始緊張感を持続し続けたステージは昨年のブランキージェットシティーのラストライヴを彷彿とさせ、見事だった。 【ヴェテランアーティスト】 エコー&ザ・バニーメン/ニール・ヤング/ブライアン・イーノ 来日したこと自体が信じられない顔ぶればかり。ニール・ヤング怒涛の2時間半のステージ、20分にも及んだ『Like A Hurricane』、まさかまさかのアンコールは生涯忘れない。そしてブライアン・イーノの形容に苦しむ魅惑的で幻想的なステージは、貴重さという意味でフジロックをスペシャルなものにしたのだと思う。 【ハード&ヘヴィー】 アレック・エンパイア/Tool/エミネム 個人的にはわりかし冷静に観ていた。エミネムを前半しか観れなかったのが少し心残り。アレック・エンパイアのバンドメンバーって、結局どんな顔ぶれだったのでしょう? 【女性アーティスト】 パティ・スミス/アラニス・モリセット/アニー・ディフランコ パティ・スミスはほんとうにいいライヴだった。パティをよく知る人にも、全く知らない人にも体感してほしいライヴだったと思う。ニルヴァーナの『Heart Shaped Box』のカヴァーもあり、そしてまさか『Frederick』を演ってくれるなんて!アニー・ディフランコも、アコースティックギターをかきむしった見事なライヴだった。 【ニューカマー】 モ・ソリッド・ゴールド/クーパー・テンプル・クロウズ/サウス 個人的ベストはモ・ソリッド・ゴールド。ヴォーカルKの歌にアクションにただただ脱帽。クーパー・テンプル・クロウズは期待以上の熱のこもったステージでびっくり。サウスはCDでの緻密ながらスケール溢れる演奏を更に増幅したライヴになっていて、すっかり見とれてしまった。 【日本勢】 ブンブンサテライツ/ナンバーガール/スーパーカー/ブラフマン/ムーンライダース 今まで気にはなってはいたけど観たことがなかったアーティストを一挙に観ることができた。度肝を抜かれたのはスーパーカー。もっとソフトなロックかと思っていたのに、ラウドでテクノなライヴだった。そして大御所ムーンライダース。日本にもこういう先人がいたのだということは素晴らしく、そして誇らしいことだと思う。 ここに挙げた以外のバンドのライヴも素晴らしかったし、私が観た以外のたくさんのバンドも素晴らしいライヴを演ってくれたことと思っている。そして、来年は今年のラインナップよりグレードが落ちるという覚悟は、今からしておくことにします。 |
8. トータル | 全体としてどうだったか、そして来年に向けて |
嵐の第1回から参加し続けて、今年が最もよかったと思っている。特に今回は仕切り面についての向上がめざましく、スタッフの皆さんには感謝しています。連日すごい人の数で、動員数がどれくらいだったのか、正式発表が待ち遠しい。 コストを下げずにフェスのクオリティーを上げたのが今年のフジロック。でもやっぱり、参加する側としてはコストを下げて欲しい。年々少しずつ問題点をクリアしてはいるが、それでもまだまだ問題が残っているのが実態。これは来年以降引き続き改善して行ってほしいと思うし、私もベターと思えるアイディアがあれば自分のホームページ上で呼びかけて行くことにしたい。 |