Fuji Rock Festival'01 Day 2-Vol.6 Neil Young & Crazy Horse







いよいよ中盤戦のクライマックス、ニール・ヤングの登場である。ったくこのクソ頑固ジジイめ(笑)。だいたいだな、ほとんど毎年のようにアルバム出してツアーもしているくせに、12年も日本に来ないやつがあるか(笑)。こんなに待たせやがって、もう(笑)。・・・という、悪態のひとつもついてみたくなる。


スタートは、意外や落ち着いた出だしだった。ニールはテンガロンハットにチェックのシャツにジーンズ姿。右足でリズムを取り、上体を前後に揺らしながらギターを弾き、そして歌う。間奏ではクレイジーホースの面々とギターを寄せ合いながら爪弾く。映像では何度も観てきたその姿が、今目の前にある現実のものとなっているのだ。『Love And Only Love』で早くも最初のクライマックスが訪れる。フジロックでニール・ヤングだよ~。野外でニール・ヤングだよ~。ホントかよ~(笑)。





しかし中盤までは比較的地味な曲が続く。もちろんクレイジーホースともども轟音ギター炸裂だし、演奏自体は圧巻なのだが、個人的にはどうも今ひとつピンと来ていない。超久々の日本なので、今回多くの人がニールのライヴを始めて観るはずなのだ。もちろん私もそうだし。なのでもっとわかりやすい選曲にしてくれてもいいと思うのだけれど。まあ、日本だからとか、12年ぶりだからとか、特別にそんなことを意識せず、他の国のフェスと同じようにライヴをするのがニールらしいといえばらしいのだけど。


ピンと来ていない原因は私自身の中にもあって、目の前のニールのライヴに感激しつつ、頭のどこかではホワイトのニュー・オーダーが気になっていたのだ。ニールが12年ぶりの来日なら、ニュー・オーダーは実質8年ぶりの復活に14年ぶりの来日。しかもサポートでスマパンのビリー・コーガンまで参加している。アコースティックコーナーになったとき、私はホワイトの方まで行ってみることにした。が・・・、途中の林道で既に入場規制がかかっていて先に進めず。嗚呼。





グリーンに引き返すが、もちろんニ−ルのライヴは続行中。ここからが怒涛のクライマックスの連続の幕開けだった。『Hey,Hey,My,My(Into The Black)』。もともとはパンクロックへのアンサーソングとして書かれた曲が、カート・コバーンの自殺によって更にファクターが重なり、今や異様な魅力を備えた曲になってしまった。続いては『Sedan Delivery』。いずれも、もともとアコースティックだったニールがこんにちまで第一線のアーティストであり続けることのできる分岐点となった作品『Rust Never Sleeps』からだ。





そして、いよいよそのときは来た。






雷鳴のような音が轟き、閃光が煌き、ステ−ジの両端にはろうそくを思わせるセットがあって、これが薄く点灯する。そしてあのイントロが。ニールのテーマ曲のような位置付けにあり、日本の地で轟くのは実に25年ぶりになる、『Like A Hurricane』だ!


ニールがクレイジーホースを連れてくると聞いたときから、私はこの瞬間を待っていた。あくまで私見だが、'97や'98のときは会場全てを巻き込んだこれぞ野外、これぞフェスティバルという瞬間はあったけど、苗場に移ってからは日程も3日間に広がり、ステージの数も増え、どこかまったり、ゆったりモードが漂っていて、ギリギリまで追い詰められたような切迫感と、そうした状況の中で初めて生み出される美しさという瞬間が乏しかったように思っていた。が、それもここまでだ。ニールのギターが、ニールの歌声が、今まさにそれを生み出しているのだ。


曲は途中からインプロヴィゼーションの嵐となり、ニールはただひたすらギターを弾きまくる。更にはギターの弦をぶちぶちと切り、ギターを持ち上げて振りながら歪んだ音を出し、切れた弦を使ってなおも弾きまくる。この高いテンション。この凄まじいまでのエネルギー。結局『Like A Hurricane』は20分にも及び、その間じゅうニールは暴れまくっていた。ニールにしてみればいつものことかもしれないが、ここに集まったオーディエンスにとってはスペシャルな瞬間の連続だったのだ。





バンドはステージ袖の方に引き下がるが、当然のようにアンコールを求める拍手が発生する。時刻は既に夜の11時20分。グリーンのライヴは11時終了予定ということを考えれば、これで終わってしまっても不思議のない状況だ。が・・・、ニールと狂った馬たちは、再びその姿を見せた。そして始まったのは、『Rockin' In The Free World』だ!


先程の『Like A Hurricane』にも少しも劣らない演奏のテンション。まさかまさかのアンコールに狂喜したオーディエンスによる、サビの大合唱。こんな素晴らしい瞬間に、居合せることができたなんて。こんな素晴らしい瞬間を、みんなと一緒に共有することができたなんて。そしてこのときになって初めて気付いたのだが、コーラスの女性2人はニールの妻ペギと、実妹アストリッドだった。ニールはクレイジーホースだけでなく、愛する家族までも動員して、このフジロックに臨んでくれたのだ。この歓喜のひとときは『Powderfinger』で締めくくられた。





更なるアンコールを求める拍手が沸き始めたけど、さすがにもうこの先はないだろうと思っていた。しかしなんということか、彼らは再びステージに姿を見せたのだ!こんなことがあっていいのか。こんなことが、ほんとうにありうることなのか。


『Roll Another Number』でゆったりと始まり、さすがにリラックスモードでほのぼのと終わるのかなと思ったのもつかの間、荒波は静かに押し寄せてきた。ニールはギターを膝の上に置いたままでピアノを弾き始める。かすかに聞こえてくる音色、そしてかすれた歌い始め・・・。『Tonight's The Night』だ!ほんとうか?これはほんとうに現実に起こっていることなのか?静かに始まった曲は徐々にヘヴィーでラウドに変化し始め、ニールはピアノの前に座ったままでギターを弾く。そのタイトな仕上がりを維持したまま一気にまくしたてて終了。ニールは静かにステージを去った。





今だかつて、フジロックで2時間半ものライヴを演ったアーティストなどいない。そして時間の長さだけでなく、その密度及び野外という舞台を武器にしスペシャルな空間を作り上げたということにおいて、ニール・ヤングのライヴは'97のレイジ・アゲインスト・ザ・マシーン、'98のイギー・ポップに匹敵する、"伝説"になりうるライヴになったと思う。恐らく今後ニールが単独で再来日し、各地のホールで公演を行ったとしても、今回を越えるライヴになることはないだろうと思う。これこそまさに野外フェスティバルの醍醐味なのだ。

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(2001.8.5.)
















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