Fuji Rock Festival'00 Summary フジロックフェスティバル'00を総括する
さて、今年で4年目を迎えたフジロックフェスティバル。とても楽しい3日間、いや前夜祭も含めれば4日間ということになるが、今年も大成功に終わったと思っている。来年も苗場で開催されることが早々に発表された中、ここでは今年のフジロックの良かった点、改善すべき点を検証しようと思う。もちろん私の独断と偏見によるものです。 |
1. 会場 | 苗場スキー場は快適だったのか |
2. 仕切り | 主催者の手際はよかったのか |
3. ショップエリア | 食事やグッズ売り場はどうだったのか |
4. コスト | チケット代や交通費について |
5. ラインナップ | 超大物不在?今年は数で勝負か |
6. トータル | 全体としてどうだったか、そして来年に向けて |
1. 会場 | 苗場スキー場は快適だったのか |
2年連続同一会場での開催はフジロックでは初。4つのステージという景観も定着しつつある。もともとフジロックは「不便さを楽しむ」と繰り返し謳ってきたが、ここ苗場の敷地内は逆に便利ですらある。ステージ間は自由に行き来できるし、自分が目当てのアーティストを見たければ前へ、そうでなければ後方で座ったり寝そべったりして観ることもできる。後方で観ればアーティストとは距離があって遠く感じてしまう、という違和感もなぜかここにはない。以後毎年苗場で開催してもよいのではないのかなと思う。 難点はトイレの数。特にホワイトステージはもう少し増やすべきだと思う。もうひとつはグリーン~ホワイト間の林道とアヴァロンフィールド~フィールドオブヘヴンの道の雨対策。特に後者はドロドロでひどい状態になってしまった。 |
2. 仕切り | 主催者の手際はよかったのか |
年々行き届くようになってきている。今年について特筆すべきことと言えば、1日目が雨だったが、それが2日目朝にはぬかるんだ道に砂利がまかれていたり、トイレ前にはすのこが置かれていたりして、少しでも歩きやすくなるような処置が取られていた。スタッフが夜を徹して作業したと思われ、ただただ感謝の気持ちでいっぱいだ。 難点は入場時の列。通し券の人と1日券・2日券の人の列は分けるべきだし、それはできないことではないと思う。なんで券の種別にかかわらずみんな一緒になって長い列を作って並ばなければならないのか。通し券の人は先に行ってもいいよ、というような呼びかけをしてもいいと思う。 |
3. ショップエリア | 食事やグッズ売り場はどうだったのか |
グッズ売り場は入場ゲート手前にフジロックオフィシャルものの売り場が一箇所。そして場内、グリーンとホワイトの間にアーティストものの売り場が一箇所。もう少し増やしてほしい。特にアーティストものの方の売り場は夜になるまで列が絶えなかった。 レッドマーキー脇のショップエリアは今年も充実。グリーンからもマーキーからもすぐ行けるのでとても便利だった。アヴァロン・フィールドにもショップエリアがあったが、コチラは初日は雨で足場が不安定になり、ちょっと大変。でもあの立地だと、雨対策も施しようがないかもしれない。 |
4. コスト | チケット代や交通費について |
1日券で14,500円。3日通しだと38,000円。去年より少しだけ安くなったが、これではやはり敷居が高い。更には現地までの交通費や宿泊費などを考えると、フトコロは痛む一方である。これを解決するには長い年月を必要とすることになりそうだ。 |
5. ラインナップ | 超大物不在?今年は数で勝負か |
今年のフジロック最大の問題であり、来年に向けての大きな課題だと思う。アーティストの好き好きはそれこそその人が聴いてきた音楽やその人の感性によって大きく異なるとは思うが(と前置きして)、4年連続で参加した私からすると、最も寂しいラインナップだったと感じている。動員数が落ちたのも当然だろう。フジロックには誰を観に行くというより、その場にいるだけで楽しいという雰囲気があるのは確かだ。が、遠方から来る人やフェスに参加したことがない人が何をトリガーに参加不参加を決めるかといえば、それはやはりラインナップということになると思う。 ステージ別に考えると、最も充実していたのがレッドマーキー。モグワイにラムシュタインにゴメスにSFAにヨ・ラ・テンゴに、と、私が見ただけでも凄かった。そしてWOWOWの放送やYahooのフジロック配信なども見る限り、イーグル・アイ・チェリーやベントレー・リズム・エースも素晴らしかった。…が、これは裏返すと今回はレッドマーキークラスのアーティストしか呼べなかったとも言える。 アニマルハウスもエラスティカも、グリーンよりはむしろレッドマーキー向けだと思っている。エラスティカは実質5年ぶりの活動再開、アニマルハウスは元ライド、そして付け加えるならばジョニー・マーも元スミス、という金看板を背負っての出演。話題性はあるが、グリーンを張るには物足りなかった。 ホワイト・ステージとフィールド・オブ・ヘヴンはワタシは数えるほどしか見ていないが、ヘヴンはともかくホワイトも少し物足りなかったと思う。見ていないというよりは、見る気にさせてくれるアーティストが少なかったとでも言えばいいのか。例えば去年なら、レイジとアンダーワールド、アタリとケミカル、ブラーとジョンスペ、というように、ああどっち見りゃいいんだあ、という苦渋の選択を迫られたものだが、今年はそうした"嬉しい悩み"が生じることはなかった。 ホワイトステージを考えると、そのまま今年と去年のラインナップ比較へと想いを走らせてしまう。去年のホワイトはインパクトならワールドクラス?の電撃ネットワーク、新進気鋭のニーヴ、そして大トリは復活劇を遂げたハピマン。参加したその当時はそれほどとも思わなかったのだが、今年のメンツを見るにつけ、去年は凄かったとしみじみ思うようになってきている。 そして問題のグリーン。私はフー・ファイターズもイアン・ブラウンもソニック・ユースも、実はホワイトクラスだと思っている。彼らの来日公演はほとんどライヴハウスで行われていて、つまり彼らの集客能力は、日本ではその辺だということになるからだ。グリーンを飾ろうとするならば、名前や顔も大事かもしれないが、それよりもアリーナクラスを集客できるだけの力量を持ったアーティストが飾るべきだと思うが。 私が思う、フジロック出演に最も近いアーティスト。それは、過去にSMASHが招聘した実績があり、なおかつかつてのフジロックに出演した実績があること。開催前にこそメタリカだスマパンだジェフ・ベックだと色々なアーティスト名が飛び交ったが、プロモーターとして手が出せる限界が露呈したというか、結局は落ち着くところに落ち着かざるを得なかったという気がしてならない。そして今にして思えば、モリッシーの出演中止が残念でならない。 SMASHにはオアシス、ベック、レイジというヘッドライナークラスの持ち駒があるが、これらはいずれも今年単独で来日してしまい、しかもほぼ全国規模に渡るツアーをしてしまった。来年以降に期待、となるのか。 しかし来年もサマーソニックとの争奪戦になるなあ。
そうした中、各日のトリを飾ったブランキー、ミッシェル、プライマルはそれぞれ素晴らしかった。ヘッドライナーとしては今ひとつ物足りない…と感じたのも開催前までの話。 ブランキーはこれがほんとうのラストライヴとなったのだが、流すでもなく感傷的になるでもなく、彼らは最後まで前のめりであろうとした。危うさと美しさが何度も交錯し、その瞬間瞬間に私はシビれた。ミッシェルは、思えば2年前の壮絶ステージから既にヘッドラインを飾ることを運命づけられていた。そして彼らは恐るべきスピリットでそれに応えた。『XTRMNTR』の衝撃は野外でこそ映えると2月の来日公演のときに感じたプライマルは、見事にそれを証明してみせた。 今回のフジロックでライヴを観て、今後単独で来日したら間違いなく観に行くと思ったのはモグワイ。日程の都合がつけばもう1度観てみたいのはプラシーボとエリオット・スミスだった。 そして毎年必ず訪れる、フジロックでなければ生まれない瞬間。フジロックがフジロック足り得る瞬間。それを象徴する「歌」。私にとっては、'97はレイジの『People Of The Sun』、'98はイギー・ポップの『Lust For Life』、'99はスカンク・アナンシーの『Secretly』。では今回は…。 私にとってはブランキーが3日間通してのベストアクトだった。そして'00を象徴する「歌」は、ラフィータフィーの『パンク君が代』だ。「きみがよーー、きみがよーー、なえばでよーー、」と最後に歌った清志郎の姿を私は忘れない。毎年フジロックに参加し続ける清志郎。恐らくフジロックが続く限り『田舎へ行こう』は毎朝流れ続けるだろうし、清志郎も出演し続けるはずだ。清志郎はロックだった。 |
6. トータル | 全体としてどうだったか、そして来年に向けて |
フジロックはグラストンベリーをモデルにした野外フェスティバルだが、欧米に乱立するフェスティバルの単なるコピーではない、日本ならではのフェスティバルが今年ついに確立され、覚醒したのではないかと感じている。基本的に来年も行くつもりでいる。行くというよりは今や「来年また帰ってくる」という感覚に近い。 望むべくはラインナップの充実とコスト削減。動員が伸びればチケット代は下げられる。動員を伸ばすためには、フジロックの良さ、フジロックに参加する楽しさを知らないファンにも訴えるラインナップを揃える必要があるだろう。 |