The Prodigy(Electraglide 2004) 2004.11.26:幕張メッセ国際展示場9番ホール







WIREと並び立つインドアのテクノ系イベント、エレクトラグライドも今年で5回目の開催になる。個人的にはクラフトワークを擁した2年前以来の参加となるのだが、そうさせたのは、実に7年ぶりとなる新作をリリースしたプロディジーがヘッドライナーであることと、フジロックで驚愕のパフォーマンスをみせつけた!!!(チック・チック・チック)がエントリーされていたからだ。


会場は、今やインドアのオールナイトイベントではお馴染みの幕張メッセだが、今回は9番から11番ホールまでを使っている。入り口や物販を2階にし、11番ホールが飲食エリア、そして9番と10番はぶち抜きになっていて、DJステージとライヴステージが対角線上に向かい合うように設置されている。タイムテーブルも、DJアクトとライヴアクトが交互に行われるようになっていた。プロディジーの登場は深夜1時で、その前には3組のアクトがパフォーマンスを行っていた。





2ManyDJsのパフォーマンスが終了し、DJステージが暗転。すると今度はライヴステージの照明が点灯され、既にフロアに陣取っていたファンからはどよめきが起こり、前方に押し寄せて行く。まずは、リアム・ハウレットがサポートのギタリストとドラマーを従えて登場。早速イントロが始まり、少ししてからマキシムとキースが姿を見せ、ラップを刻みMCで煽り、と、つまり「スイッチ」が入った。


曲は新譜からの『Wake Up Call』で、ステージ上を右に左にと歩き回りながら「1・2・3!!」を連呼するマキシムとキース。新譜からといっても、この2人はレコーディングには参加しておらず、ヴォーカルも別の人が起用されていたので、CDで聴いていたのとは印象がまるで違う。ここではライヴらしい生々しさに満ちていて、なんだかほっとした。そして、キースが早くもステージ下に降臨。フロアは真ん中に柵があって左右にブロック分けされている。柵と柵の間にできている通路を歌いながらゆっくり歩き、柵にかぶりついているファンとハイタッチを交わしたりもして、場内は早くも興奮状態に。曲の終盤では柵のへりに上がり、綱渡りのように歩いてステージに戻っていった。





ステージは、向かって右にギタリスト、左にドラムという配置。中央は高い段になっており、そこにプログラミング機材に埋もれるようにリアムが鎮座している。バックには鉄骨がWの字型に組み立てられていて、そこからスポットライトが閃光し、オーディエンスの視覚を刺激する。曲は今や懐かしさが感じられる『Their Law』となり、2人のパフォーマーは相変わらず忙しく動き回っている。


もちろん興奮度の高いライヴであることに間違いはないのだが、プロディジーにしては割と無難な立ち上がりのように感じた。しかし、『Spitfire』の女性のAh~Ah~Ah~Ah~というイントロが響いた瞬間に、場内の空気が一変。実に7年ぶりとなった新譜『Always Outnumbered, Never Outgunned』の冒頭を飾っている曲ということもあり、新生プロディジーの名刺的な位置の曲だと思う。オーディエンスの認知度も高かったようで、リアクションも上々。2年前のライヴでは味わえなかった感覚が、ここにはある。そしてこの感覚を体感するために、私はここへ来たのだ。


曲はシングルカットされた『Girls』へとなだれ込んで興奮の度合いを増し、更に畳み掛けるように必殺技の一角『Breathe』が放たれる。今度はマキシムがステージを降り、中央の花道まで足を伸ばす。いい流れだ。セックス・ピストルズの曲は今聴くととてもスローで、これが当時世界を席巻したパンクの中心に位置した音なのかと、後追いの身としては首をひねりたくなる。のだが、『The Fat Of The Land』が起こした瞬間最大風速で世界を吹き飛ばした彼らの勢いは、7年を経た今になっても少しも色あせてはいない。





私がプロディジーのライヴを観るのは、今回が4度目になる。思い起こしてみると、これまでの会場はいずれもアリーナクラスもしくは野外フェスティバルだった。今回も幕張メッセで巨大会場の部類ではあるのだが、9番ホールの角に設置されたステージ、そしてそのステージはあまり高くなく、オーディエンスとしてはアーティストに見下ろされているという感覚は薄い。フロアの広さもさほどでもないように思え、場内全体がコンパクトになったような印象を受ける。こうした環境で彼らのライヴを観るのは初めてで、それでマキシムやキースがステージを降りてやってくるのだから、密度の濃さといったらたまらない。


キースはまたもステージを降りて花道を歩き、そのままPAのブースにまで行ってしまった。私はずっとPAの柵越しにライヴを観ていたので、一瞬目の前をキースが通り過ぎ、またその後しばらくステージとPAを交互に振り返るように見る具合になった。ステージ上ではマキシムがMCで煽っていて、ではキースはというと、PAのスタッフの合間でしばし体を揺らして小刻みに踊っていた。やがて車輪の小さな自転車に乗って花道を戻り、そのままステージに生還。ステージ上でも、右に左にと自転車を乗り回していた。





ライヴは必ずしも「動」ばかりではなく、「静」を感じさせる瞬間もいくつかあった。それは、プロディジーがバンドとして成熟した結果であるようにも思え、逆に安心した。終盤ではお馴染み『Firestarter』も飛び出し、アンコールは『Poison』から『Smack My Bitch Up』へという、磐石の運びを見せた。7年のブランクはあまりにも長かったし、2年前のライヴでは、次の一手をどう打つか決めあぐねて、とりあえずやってみている姿があった。しかし2004年になって、彼らは帰って来たのだ。

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(2004.12.4.)















他のアクトや会場の様子など






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