Rage Against The Machine
Sales Date:1992.11. | ||
Produce:Rage Against The Machine& Garth Richardson | ||
Amazon.co.jpで購入−日本盤/US盤/UK盤 | ||
1. Bombtrack | 6. Know Your Enemy | |
2. Killing In The Name | 7. Wake Up | |
3. Take The Power Back | 8. Fistful Of Steel | |
4. Settle For Nothing | 9. Township Rebellion | |
5. Bullet In The Head | 10. Freedom |
私は90'sのバンドについて同時進行で聴くようになったのは、それこそこのサイトを立ち上げてからのことだ。というか、もしかしたら今現在でもついて行けてないのかもしれないけど。このアルバムを初めて聴いたのは97年の夏。つまりフジロック'97にレイジが出演するのを受けてのことである。私は基本的にCDは国内盤で購入することにしている。が、なぜかこのレイジのファーストはどこを探しても見つからず、フジロックの1週間前になってようやく手に入れることができた。
衝撃だった。
悔しかった。自分に腹が立った。このアルバムの発表は92年。こんなスゴいアルバムがこの世に存在することを5年も知らずに、日々のうのうと生きてきたなんて。
まずはアルバムの顔でもあるジャケット。これはドラマや映画のワンシーンなどではなく、実際に起こった出来事なのだ。ヴェトナム政府の強引なカトリック化に反対する僧が、抗議のための最後の手段として弟子にガソリンをかけさせ、焼身自殺したのだ。何も語らない、ひと言も発しないこの1枚の写真は、しかし見る人全ての背筋に戦慄を走らせ、悲しみを漂わせつつも何かを訴える。
そしてこのアルバムに封じ込められている断定的な「音」は、ジャケットに劣らず衝撃的だ。ラウドでヘヴィーなサウンドとヒップホップの融合。激しいビートとシャウト。そしてほとばしる熱いメッセージ。ザックのラップを刻むヴォーカルは単なるノリではなく、バンドの明確なアティテュードを知らしめるための必然的な手法なのだ。
『Bomtrack』のイントロが流れた瞬間、何か今までにはない、新しいスタイルのサウンド、新しいスタイルのバンドが胎動を始めたことを痛感できる。この幕開けに、私はレッド・ツェッペリン・ファーストの冒頭を飾る『Good Times Bad Times』にも相通ずる劇的な瞬間を感じている。少し前には、パール・ジャム『ten』のトップに位置する『Once』にも同じようなインパクトを感じていたが、レイジのそれにも同様のベクトルがある、と信じている。これらのアルバムは、単に新人バンドのデビュー作であるだけでなく、ロックシーンの中で大きな分岐点に位置していると私は勝手に確信している。
一見地味な、モノクロチックなサウンド。しかし、ここに収められているどの曲も、ライヴパフォーマンスでは新たな生命を注入され、まるで火口から噴き出すマグマのように熱く燃えたぎる恐るべきパワーとエネルギーを発揮する。ラストの『Freedom』は、初期ライヴのラストに据えられることも多く、そしてそのタイトル通り、彼らは権力や抑圧からの自由、自分らしくあることを叫び続けるのだ。
私が90'sのバンドについて、そのほとんどを後追いで聴く格好になったのは、60's~70'sの輝かしい一時代を形作った多くのビッグネームのバンドについて調べ、耳を傾ける・・・、つまり「過去への旅路」をずっと歩んでいたからだった。そのこと自体は誤りだとは思っていない。
その一方で私は90'sのバンドに対する物足りなさと寂しさを感じていた。自分があと10年、あと20年早く生まれ、ストーンズやツェッペリンやデヴィッド・ボウイやクリムゾンの音楽をリアルで体験できていたのなら、それはどれだけ幸福なことだっただろうか。それに比べると90'sのバンドは・・・、という具合だ。
しかし、その考えは誤りだ。何が物足りないものか。何が寂しいものか。私がこうしてロックを聴き、ライヴ会場に何度も足を運び、自分で音楽関連のホームページを作っているのと今まさに同時代を熱く生き抜くバンドとして、パール・ジャムがいて、椎名林檎がいて、そしてレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンがいるのだ。