Led Zeppelin Π レッド・ツェッペリンΠ

Sales Date:1969.10. 1. Whole Lotta Love 5. Heartbreaker
Produce:Jimmy Page 2. What Is And
What Should Never Be
6. Living Loving Maid
(She's Just A Woman)
3. The Lemon Song 7. Ramble On
4. Thank You 8. Moby Dick
9. Bring It On Home






マネージャーのピーターグラントの戦略によって、ツェッペリンはまずはアメリカのマーケットに照準を定めた。『Ι』はまさに衝撃的であったが、バンドの真骨頂はライヴパフォーマンスにこそあった。毎夜毎夜繰り広げられる圧倒的なライヴ。そして、今や語り草になっているグルーピーとの乱痴気騒ぎ。そうしたぐちゃぐちゃしたゴッタ煮状態のツアーの合間をぬう形で、『Π』はレコーディングされた。




この『Π』は、全てのハード・ロックの頂点に位置する作品と言い切っても過言ではないだろう。そして、80'sに登場するヘヴィー・メタルのルーツもこの中にある、とみなすこともできる。『Ι』に見られたトラッド色が削ぎ落とされ、ゴツゴツしたハードなサウンドが全体を支配している。ハード・ロックの古典的名曲が数多く収録されている。




アルバムの冒頭を飾る『Whole Lotta Love』は、シングルとしては全米4位まで上り詰めた最大のヒットであり(バンドがシングルヒットを望んでいなかったため、シングルカットそのものが極めて少ない)、後に『Stairway To Heaven』が登場するまでバンドの聖歌的存在であった。イントロのリフが流れた瞬間に全身に電流がほとばしるかのような衝撃を感じ、そのままプラントの絶叫が曲を引っ張って行く。間奏はボーナムのドラミングとペイジのギターソロの掛け合いとなり、壮大さが一層増幅されてくる。ライヴでは20分にまで拡大されて演奏されることもしばしばであり、まさにバンドの顔、名詞的位置付けだ。




そしてもう1曲、どうしてもピックアップしたいのが『Moby Dick』だ。ジョン・ボーナム渾身のドラムソロがフィーチャーされており、前述の『Whole Lotta Love』や『Dazed And Confused』と同様、ライヴでは20分以上にまで拡大されることの多いハイライトのひとつである。首を激しく振り、両腕をクロスさせてドラムを叩くボーナム。もしかしたら全てのドラムソロの定番、お手本的な曲なのかもしれない。「あんなスゴい奴はもう現れないさ」とボーナムのことを語ったのは、同じくドラムスティックを握るチャーリー・ワッツである。





























『Ι』は最高位全米10位を記録し、イギリスの新人バンドとしては上々の成果を記録した。そして『Π』は、約1ヶ月チャートの2位に居座り続けた後、ついにビートルズの『Abbey Road』を蹴落として全米第1位を獲得した。ツェッペリンのメンバーはほくそえんだ。あのビートルズよりビッグになったのだ、と。




1969年~70年にかけて、ロック界は大きく揺れ動いた。ビートルズはポール・マッカートニーの解散宣言によって、ついにその活動にピリオドが打たれた。ローリング・ストーンズはブライアン・ジョーンズが自宅プールで水死し、バンド内に暗い影を残した。ジミ・ヘンドリックスも、ジャニス・ジョップリンも、若くしてこの世を去ってしまった。そうした中、レッド・ツェッペリンは全てがうまくいった。全てが順調に運んでいた。





























私はレッド・ツェッペリンをハード・ロック・バンドだとは思っていない。ハード・ロックを基調にした、様々で多彩な側面を持つ、唯一無二のロックバンドだと考えている。だからこそ、解散から10年も20年も経っている今でさえ、ツェッペリンの音は少しも古びておらず、聴いていて心踊るのだ。なので、この『Π』については初期の代表作とかハード・ロックの古典とかいう、一般的な評価ほどの思い入れは感じていない。




だがしかし、それでもこのアルバムが以後のロックシーンに及ぼした影響力の大きさはひしひしと感じている。ツェッペリンがいなければ、このアルバムが生み出されなければ、ハード・ロックやヘヴィー・メタルがこの世の中に産声をあげるのがもっともっと遅れていたかもしれないし、ひょっとしたらそれらの音楽は存在しなかったかもしれないのだ。












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