Kraftwerk Discography　Another Items

　リリース直前にヴォルフガング･ツルールとカール･バルトスが脱退はしたが、過去の作品をリメイクしただけと、決して侮るなかれ。リリース当時は斬新に思えた数々の作品も、時の審判を経てスローに聴こえてしまうことしばしば。ならばと、今の時代にも耐えうるべくよみがえらせたのだ。選曲もベスト的で、初心者にもお薦めできる。ドイツがテクノの総本山となり、その頂点に位置するのがクラフトワークだということが、今作を聴けばわかると思う。

　公式盤ではないが、といってブートレッグでもなく、なぜか流通している初期のライヴ音源。通常考えうるライヴならではの熱気はほとんどなく、曲間にオーディエンスの乾いた拍手があるくらい。しかし逆に、機材を丹念に操作するメンバーの動きが、音を通じて伝わってくるような臨場感が味わえる。『Autobahn』終了後、約3分に渡ってエレクトリックパーカッションの調整をするという、人間臭さが収録されているのも貴重だ。『Kometenmelodie』は、アルバムではパート1とパート2の2曲なのだが、ここでは集約していて10分オーバーの大作に仕上げている。

　もともとは83年にリリースされ、「テクノ･ポップ」というタイトルの次作アルバムにも収録されるはずだった。しかし結局そのアイディアは封印され、次作アルバムも『Electric Cafe』として86年にリリース。本シングルは、99年にようやくCD化された。テーマはずばりヨーロッパを横断する自転車レースで、ラルフ･ヒュッター自身健康法としてツーリングを取り入れているとのこと。20年後の2003年に同名のアルバムがリリースされ、ここでのバージョンはラストに収録された。

　2000年にドイツで開催された万国博覧会のテーマ曲として前年にリリース。86年の『Electric Cafe』以来、実に13年ぶりとなる新曲だ。『Autobahn』を思わせる淡々とした曲調の中に、アンビエントの要素と近未来を思わせる情感が感じられる。70'sには時代を先取りし、80'sには時代に埋もれた(と当時はみなされていたらしい)クラフトワークが、世紀末を迎えて今再び時代と向き合わんとするさまが伺える。