Love And Mercy - ソロ始動
ブライアン・ウィルソン・ストーリーVol.5
1988年、突然(という印象が強い)ブライアン・ウィルソンのソロアルバムが発表された。ドラッグ漬けだの精神がボロボロだの、ネガティヴな話題ばかりが取り沙汰されていただけに、たまらなく嬉しいニュースだった。
Brian Wilson
自らの名前をアルバム名に冠した記念すべきソロファーストアルバム。そして特筆すべきはその内容!まるで『Pet Sounds』が80'sに蘇ったかのような、というか『Pet Sounds』の文脈が80'sに継承され、80'sの時代性を新たに解釈として加えたような出来。いつ聴いても懐かしさを感じてしまう永遠不変のメロディがここにはある。・・・と感じるようになったのは、実は最近聴き直してからのことで、発表当時はそこそこの出来ではあるがどこか不安定だなあ、という印象を抱いていた。
アルバムの冒頭を飾っている『Love And Mercy』がシングルカットされたが、同日になんとビーチ・ボーイズの『Kokomo』もシングルカットされていた。この曲はトム・クルーズ主演の映画「カクテル」の主題歌に使用されたこともあって全米1位を獲得。対して『Love And Mercy』はチャート上位にランクインはならず。セールス上はブライアンの惨敗に終わった(でも、これから以後のブライアンの活動の本質とその意味は、チャートアクションうんぬんでは語り尽くせないと思っている)。
I Just Wasn't Made For These Times / 駄目な僕
95年発表。同名のドキュメンタリーフィルムのサントラであり、過去の曲のセルフカバー集である。このスタイル、何かポール・マッカートニーが84年に発表した『Give My Regards To Broad Street/ヤァ!ブロード・ストリート』と同様の趣を感じてしまう。
Orange Crate Art
95年発表。あの『Smile』以来になるのか、ヴァン・ダイク・パークスとのタッグが復活して作られたアルバム。ヴァン・ダイクの作品にブライアンがヴォーカリストとして参加、という形になっているらしい。しかし、『Smile』(のために作られた楽曲群)がどれも緊張感に溢れているのに対して、ここでの曲は何か肩の力の抜けたリラックスしたような雰囲気を感じる。
とにもかくにも、断続的にブライアンからこうした便りが私たちに届けられるのは嬉しいことだった。余談だが、ブライアンの愛娘カーニーとウェンディを含むユニットのウィルソン・フィリップスが90年にデビュー。シングル『Hold On』が全米1位を獲得した(同名のアルバムも発表している)。