シガー・ロス(Sigur Ros)『Heima』
シガー・ロス初の映像作品『Heima』を観た。DVD2枚組で、計4時間半にもわたるヴォリュームだ。
タイトルはアイスランド語で「故郷」の意。アルバム『Takk…』のツアーで、2005年から2006年にかけて世界ツアーを行ったバンド(日本にも2005年のフジロックと2006年4月の単独で来日)。祖国アイスランドに戻ると国内ツアーを行い、その模様を収めている。Disc1はドキュメンタリー映像、Disc2は演奏シーンをフル収録したライヴテイク集になっている。
同梱されている解説によると、アイスランドは人口30万で、そのうち20万が首都レイキャビクに住んでいるそうだ。公演は国内各地を回り、その全てをフリーライヴにしたとのこと。事前告知をしたのも2都市だけで、後は口コミに委ねたそうだ。レイキャビクこそちゃんとした会場だが、他は公民館っぽいところや教会、だだっぴろい丘、更には魚油の倉庫など、さまざまなところでやっている。客も熱心なファンばかりでなく、小さな子供やお年寄りなど、およそシガー・ロスの音楽を聴いたことのなさそうな人たちも。
ただこうしたユニークな環境の中でツアーをしたことで、世にあまた溢れる凡百のライヴ映像とは一線を画している。地元のマーチングバンドと共演したり、ダム建設反対の現場では電気を使わず、完全アコースティックでライヴを敢行したりしている。人口が2人しかいない町でも、ライヴを行った。レイキャビクの公演には25,000人が訪れ、テレビ中継もされたそうだ。これらのどのライヴもが奇跡的で、どの環境にも彼らの音がマッチしているのが素晴らしい。合間にはメンバーのインタビューもあって、バンドの活動のことやアイスランドのことについて、熱心に語っていた。
アイスランドの人たちの表情や、まるで時間が止まったかのような美しい風景なども随所に見られ、アイスランドという国を紹介する映像としても機能している。コレを観て、(実際そうするかはともかく)アイスランドに行ってみたいと思った人は、ワタシだけではなきはずだ。・・・というわけで、シガー・ロスのことを少しでも知っている人であれば、必見の映像作品である。
蛇足だが、Disc1のchapter4のところで戦時中に米軍が残して行った飛行機の残骸が映し出されるのだが、スウェードのカップリング集『Sci-Fi Lullabies』のジャケットにも似たような光景を確認できる。このジャケットの出自がどこなのか調べてみたのだが結局わからず、でももしかしたらアイスランドで撮影されたものなのかもしれない。
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