パティ・スミス(Patti Smith)『Live In Germany 1979(DVD)』
パティ・スミスの1979年ライヴの映像を観た。ドイツの音楽番組ロックパラストをDVD化したもので、画質はまあ許せる程度。当時33歳のパティはさすがに若々しい。色白でチャーミングで、しかし女性らしいというよりはむしろ中性的な印象だ。そして、その仕草や声の質は現在とあまり変わらない。
むしろ、バンドメンバーの見た目の違いが凄い。パティの保護者的存在でもあるギターのレニー・ケイは、長髪にサングラス姿で衣装もサイケデリック。現在の知性が滲み出た紳士のイメージとは、大きく掛け離れている。ドラムのJDドーハティも痩せているし、キーボードのリチャード・ソールも精悍な顔つきをしている。
ベーシストは、当時のメンバーだったチェコ人のアイヴァン・クラール。パティ活動休止後はイギー・ポップのバンドに入ったり、自身の半生を綴り、かつ当時のパティが観られる貴重な映像でもあった『Dancing Barefoot』を手掛けている人だ。ステージにおける現在のパティとこの頃のパティとの大きな違いは、アイヴァンの存在にあると思われる。なぜなら、演奏の過半数でアイヴァンがギター、レニーがベースだったのだから。もしかすると、レニーとの力関係はアイヴァンの方が上だったのかもしれない。
時期的には4枚目のアルバム『Wave』をリリース時で、セットリストは過去4枚のアルバムから満遍なく選曲されている。2曲目が『Rock'n'Roll Nigger』だったのには驚き。また、なぜかパティはほぼ2曲毎にステージの袖に掃けては戻る、を繰り返している。ちょっとらりっているようにも見えるが・・・。
『Dancing Barefoot』はともかく、他の曲でもステージを降りてフロア最前に詰めているオーディエンスに近づいているのには驚かされ、少し眩しくもある。間奏でのレニー・ケイとの絡みは、デヴィッド・ボウイとミック・ロンソンとの絡みを一瞬だけ思い出させる。
収録時間は97分で、ライヴをほぼフルに収めたのだろう。カメラはステージを降りて楽屋に向かうパティの背中まで追いかける。コレも貴重。このライヴ、複数のアーティストが出演するイベントだったのかもしれない。会場規模はアリーナクラスだったし。
70年代後半のオリジナルパンク世代は、後のMTV隆盛ともかぶらず、映画としての記録に積極的だった先達ともスタンスが異なるため、映像の記録に乏しい。こうした蔵出し映像が世に出ることは、大歓迎だ。
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