キング・クリムゾン(King Crimson)『Deja Vroom』
キング・クリムゾンはダブルトリオ期の95年に来日していて、中野サンプラザ公演がDVDとして99年にリリースされている。DVD黎明期のソフトと言え、改めて手に取るといろいろと興味深い。
現在のDVDやブルーレイは片面がほとんどと思うが、これは両面ディスクだ。つまり、かつてのアナログ盤のようにサイドAを見終わったらトレイから出し、裏返してサイドBを見るという具合だ。また、『Vroom Vroom』をはじめ、いくつかの曲ではマルチアングルに対応している。正面のバンド全員のショットを基本としつつ、6人全員のプレイを見ることもできるのだ。
セットリストは当時の新譜『Thrak』からを軸にしつつ、6人中4人が80年代クリムゾンのメンバーということもあってか、『Elephant Talk』『Frame By Frame』など、ディシプリン期からも多い。初期からは『Red』『Larks' Tongues In Aspic (Part 2)』などインストがピックアップされ、歌ものにはノータッチだ。
2000年、2003年と見た目の劣化が進んでいくエイドリアン・ブリューは、このときは長髪にジャケット姿で、伊達男っぽい。トニー・レヴィンはスティック一辺倒かと思いきや通常のベースも弾き、いくつかの曲ではコーラスもこなしていた。ビル・ブラッフォードとパット・マステロットのツインドラムは、当時は微妙なずズレが売りと言われていたが、今見るとユニゾンが結構多い。
ロバート・フリップは椅子に腰掛けて淡々とギターを弾き、ライトが全く当たらない。フリップの愛弟子から昇格したトレイ・ガンは、レヴィンのようにベースを手にすることはなく、終始ウォー・ギター(スティックをより発展させた多弦楽器)をタッピング奏法で操っていた。
特典映像では、トニー・レヴィンによるロードムーヴィーを見ることができる。リハーサル風景だけでなく、ゲームセンターで対戦型レースに興じるメンバー(フリップは不在)や、駅で新幹線を待つ間、写真やサインに応じるメンバー(フリップもサインしている)など、貴重なオフショットが満載だ。
個人的にはじめてクリムゾンを観たのがこの時期だったのだが、その後変化を続けていくのを見るにつけ、これはこれで貴重なものを観たのだと思わされる。ダブルトリオはその後いくつかの「プロジェクト」として鍛練期に入るが、クリムゾンで言えばトニー・レヴィンの参加はこの後かなりインターバルがあき、ビル・ブラッフォードは結果的にこれが最後ということになるからだ。
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