椎名林檎(生)林檎博’24ー景気の回復ー@マリンメッセ福岡A
椎名林檎関連で何度か地方遠征したことはあるが、福岡ははじめてだ。そして今回の公演は、ツアー「林檎博'24ー景気の回復ー」の最終の地になる。
開演時間を5分ほど過ぎたところで、オーケストラのメンバー、コンダクターの斉藤ネコ、ドラム石若、ベース鳥越、ギター名越、キーボード伊澤が入場。そして客電が落ちると、バックドロップに3DCGの映像で5人のお坊さんが登場し、レーザー光線を発する。『鶏と蛇と豚』が流れるが、椎名林檎本人の姿はなく、音声のみだ。
続く『宇宙の記憶』で、林檎はステージ上部のUFOを思わせる形状のアーチから、歌いながらゆっくりと降りてきた。このときは、ブロンドにピンクの衣装を纏っていた(この後白タンクトップ姿になる)。「帰って参りました」というMCは、福岡ならではだ。『静かなる逆襲』では石若、鳥越、名越、伊澤のソロがあり、双子ダンサーSISも登場する。
今回はアリーナツアーで、ステージセットやバックの映像も豪華だ。がしかし、『TOKYO』では映像が稼動せず、熱唱する林檎の姿にフォーカスしていた。展開が変則的で、タイトルの「TOKYO」が歌詞になっているのは最後の最後1回だけという、かなり特殊な曲だと思う。それだけに、生身のエネルギーを注ぎ込むように歌う彼女の佇まいは感動的だった。
『さらば純情』『おとなの掟』では貝殻がせり上がり、開くとマーメイド姿の林檎が横たわっていて、その体勢のまま歌っていた。黒猫堂2代目若旦那によるナレーションは、トーク内容がスクリーンに字幕として出るのだが、林檎はスクリーンの方に体を向けていた。そして立ち上がり、レベッカ『MOON』のカヴァーを披露した。
女性アーティストとの共演、『生者の行進』はAIのヴォーカルをスクリーンの映像として流し、林檎は生歌でデュエット。曲名不明の新曲(あっぱ『ジプシー』のカヴァー『芒に月』とのこと)では、ふたりのダンサーともどもオーケストラピットを囲むように配された花道を歩いてアリーナ前方にまで繰り出し、そしてかなり激しく踊っていた。
『望遠鏡の外の景色』は、メンバー紹介タイムだ。オーケストラとバンドは「銀河帝国軍楽団」と称され、スクリーンに会場入りするメンバーが映し出された。SISのふたりのとき、両サイドの映像でふたりは「千秋楽」と書かれた紙を掲げ、泣き真似をしていた。鳥越は、ディーブ・パープル『Black Night』のリフをちらっと弾いていた。この人、パープル好きすぎる(笑)。
林檎は和服姿になって登場し、『茫然も自失』を。そして、ここから生ゲストが怒涛のように登場する。まずは、向かって右の袖から同じ格好をした中嶋イッキュウがするするとステージに出てきて、『ちりぬるを』をデュエットした。そしてだ。
新しい学校のリーダーズと共演する『ドラ1独走』は、なんとご本人たちが登場!向かって右にSUZUKA、中央少し後方に3人が踊り、そして左に林檎。ココはグリーンの野球ユニフォーム衣装のパートだが、彼女たちも同じ格好だった。個人的に新しい学校のリーダーズを観るのははじめてだが、SUZUKAのヴォーカルは林檎の影響を受けているように思えた。
続いて、アニメ『タッチ』の同名主題歌を歌い出したのはDAOKOで、やがて林檎も加わる。林檎は背番号51だが、ファンと公言していたイチローの番号だろうか。DAOKOの背番号は34、SISのふたりは19と20だった。林檎は左投げなの?
『自由へ道連れ』は、イッキュウと林檎とのデュエット。イッキュウは、まるで林檎の完コピのようないでたちだった。その林檎は男装の麗人のような衣装だが、これが結構似合っていた。ここでもSISも含め4人で花道に繰り出し、伊澤はギターを弾いていてつまり名越とのツインになっていて、いったいどこを観ればいいのか惑わされた(笑)。
『余裕の凱旋』ではDAOKOとのデュエット、『ほぼ水の泡』でチャラン・ポ・ランタンのももとデュエット。新しい学校のリーダーズは今回が初参加だが、ほか3人は『放生会』リリース日にYoutube特番で共演した面々だった。ツアーのプランは、このときには既に決まっていたのだと思う。本編ラストは、この3人にSISも加わっての『私は猫の目』だった。
アンコールだが、ドラムイントロとまさかの軋んだギターリフに、わが耳を疑った。そしてステージが明るくなると、SUZUKAのヴォーカル、林檎のギターで『正しい街』が!林檎はSUZUKAの方を向いてギターを弾いていて、その姿がカッコよかった。SUZUKAがワンコーラス歌い終えると林檎に交代し、以降はヴォーカルを分け合っていた。誤解を恐れずに言えば、『無罪モラトリアム』の頃の林檎は東京事変以上にバンドらしかったのだ。
興奮覚めあらぬ中、映像のパフュームのっちとの『初KO勝ち』を経て、オーラスは『ちちんぷいぷい』。林檎やメンバーがステージを後にした後、『2◯45』が流れる中、エンディングの映像が流れた。これにて福岡公演は終了し、すなわち(生)林檎博'24が終了した。
セットリスト
鶏と蛇と豚
宇宙の記憶
永遠の不在証明
静かなる逆襲
秘密
浴室
命の帳
TOKYO
さらば純情
おとなの掟
MOON (REBECCA カヴァー)
ありきたりな女
生者の行進
芒に月(あっぱ『ジプシー』カヴァー)
人間として
望遠鏡の外の景色
茫然も自失
ちりぬるを(with 中嶋イッキュウ)
ドラ1独走(with 新しい学校のリーダーズ)
タッチ(with DAOKO)
青春の瞬き
自由へ道連れ(with 中嶋イッキュウ)
余裕の凱旋(with DAOKO)
ほぼ水の泡(with もも)
私は猫の目(with 中嶋イッキュウ、DAOKO、もも)
アンコール
正しい街(with SUZUKA)
初KO勝ち
ちちんぷいぷい
エンドロール
2◯45
端的に言って、福岡遠征は大正解だった。ツアー最終ということで何かしらのサプライズがあることをうっすらと期待してはいたが、まさかほんとうに起こるとは思わなかった。新しい学校のリーダーズは、今年海外ツアーをおこなうなど大きく飛躍した年になったと思うが、その彼女たちが駆けつけてくれたのは嬉しかった。
そして、『正しい街』だ。ライヴで演奏されたのは、いつ以来だろう。個人的にはじめて林檎のライヴを観たのは、1999年4月の渋谷クアトロで、そのときワタシは椎名林檎とは長い付き合いになると感じていた。それから25年が経ち、彼女にとっての「約束の地」福岡でこの曲を観れたのは、なんだか不思議な感じで、しかしもちろん嬉しい出来事だった。
彼女はアンコールのとき、「またいつかお会いしましょう」と言ってくれた。25年はひとつの区切りであると同時に、通過点でもある。これからも彼女の音楽は流れるはずだし、そしてもちろんワタシも聴き続ける。
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