『プリンス ビューティフル・ストレンジ』を観た
出だしに「プリンス財団は関与していない」という字幕が出て、このドキュメンタリーの位置づけを理解した。劇中、プリンスの曲は流れなかった。
原題は「Mr. NELSON ON THE NORTH SIDE」で、プリンスの生誕からアーティストとしてプロデビューするまでに重きが置かれている。ミネアポリスは人口の9割が白人という情報は知っていたつもりだったが、本作では「北ミネアポリス」と更に地域を絞っている。
トイレが別、黒人はレストランには入れないといった差別は、もともとアメリカ南部に見られるという理解だった。北ミネアポリスに移住した黒人たちは、独自のコミュニティを形成する。その中には、アーティストを育成する「The Way」というコミュニティもあった。
こうした環境でプリンス少年は育ち、早くから音楽に親しんでいた。父もアーティストだったがプリンスとは不仲で、友人宅に転がり込んでさまざまな楽器を覚えた。レコーディングスタジオに入る機会を得たときには、エンジニアがコンソールをどのように操作するかをじっと見ていたそうだ。
コメントを寄せる面々は、そこそこ豪華だ。チャカ・カーン、チャック・D、オリアンティ、ZZトップのビリー・ギボンズといった、アーティスト陣。衣装担当デザイナー、初期ツアーメンバーのゲイル・チャップマンといった、プリンスに近かった人たち。プリンスはステージでゲイルとキスするパフォーマンスをしていて、女性ファンの羨望の的だったそうだ。
彼らが口を揃えていたのは、プリンスは内向的な人だということ。ステージでは常に全力で激しいパフォーマンスを繰り広げるが、ステージを降りてしまえば、物静かであまり人とはコミュニケーションを取らなかったそうだ。来日公演時でも、ライヴの後クラブに行くも、奥の席に座っておとなしく飲んでいたという目撃談を読んだことがある。
非公式、非公認のドキュメンタリー映像は、特に珍しいことではない。スカパー!の音楽チャンネルでは、毎月のように誰かしらのドキュメンタリーが流れているが、その全てが公式ではない。今回、若干面食らいはしたが、個人的には前述の免疫があった分だけ、知らない情報を楽しむ方にシフトできた。
そして、将来的にはプリンス財団公認のドキュメンタリーが制作されることを願っている。
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