トキワ荘の青春(1996年)
書いたマンガを出版社に持ち込んでは、編集者からあまりよい反応を得られない寺田ヒロオ。同じアパートの向かいの部屋に住むマンガ家は売れっ子で、入れ替わり立ち替わりで編集者がやってくる。自分はマンガ家としてやっていけるのだろうかと、苦悩する日々をおくる。向かいの売れっ子マンガ家は、手塚治虫だった。
あるとき、留守にしている手塚の部屋の前でノックしようかためらっているふたりの若者を見かけ、寺田は自分の部屋に招き入れる。ふたりは藤本弘と安孫子素雄、藤子不二雄だった。やがて手塚はトキワ荘を出て、その部屋にふたりが入居する。その後も、石森章太郎や赤塚不二夫、鈴木伸一らが入居。寺田は、彼らにはお金を貸すなど面倒を見る一方、年の近い棚下照生やつげ義春には自分の苦悩を打ち明ける。
日本を代表するマンガ家たちが、若き日々を過ごしたトキワ荘。寺田ヒロオを主人公に据え、彼らの青春を描いた映像作品になる。トキワ荘周辺は、藤子不二雄Aの『まんが道』のイメージしかなかったので、違う切り口での描写は新鮮だった。実話をもとにしつつ、脚色も入っているとのことで、全編静かなトーンで物語が淡々と進行する。
キャストは、寺田に本木雅弘。落ち着いていて、感情を表に出さないストイックなキャラクターは、藤子不二雄Aに言わせれば実際の寺田のイメージに近いとのこと。若きマンガ家たちには、阿部サダヲ、古田新太、生瀬勝久など当時は無名に近い俳優が見られる。藤本の母は桃井かおり、棚下は柳ユーレイだった。
監督は市川準。テレビCMの制作を経て映画監督になった人で、富田靖子を主人公に据えたデビュー作『BU・SU』は鮮烈だった。透明感あるタッチは本作にも通ずるものがあるが、2008年に59歳の若さで亡くなっているのが残念だ。
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