ポール・ウェラー(Paul Weller)@EX Theater
東京公演に限り、娘のリア・ウェラーがオープニングアクトとして登場。なんと彼女は妊婦で、半身状態のときにはお腹がかなり大きくなっているのがわかった。モデルの彼女は細身で小悪魔っぽいイメージだったが、今の彼女は母親感ありありだ(開演前、彼女の子供と思しき子がちょこっとステージに出て来ていた)。
バンドは、ギター、キーボード、カポンというシンプルな編成。準アコースティックのスタイルで、リアのヴォーカルをフィーチャー。5、6曲を、気持ちをこめて丹念に歌っているように見えた。彼女は日本語を交えたMCを入れ、こんなに大きい会場ははじめてとも言っていた。カホンを担っていたのは、旦那のクラタだった。
約30分のセットチェンジを経て、ポール・ウェラーとバンドメンバーが登場し、『Rip the Pages Up』でスタート。この曲、オリジナルアルバム未収録で、『22 Dreams』デラックスエディションのボーナスディスク収録というレアな部類に入る曲だ。しかし、アッパーでノリのいいメロディは、オープニングに相応しい。
今回、バンドは6人編成だ。ワタシが判別できたのは、ギターのスティーヴ・クラドックとドラムのスティーヴ・ピルグリムのふたり。ベースとキーボードは、前回の来日メンバーから交代している。今回はツインドラム、そしてサックスが追加になっている。
ツインドラムは、スティーヴがリードで、もうひとりは基本スタンディングでプレイ。ビートを重ねるではなく、マラカスやタンバリンを使ってスティーヴのサポート的な役を担っているように見えた。キーボードの人は、通常はステージ向かって右のセットに陣取ってプレイするが、曲によっては向かって左のピアノ(ウェラーも使用)でも弾いていた。
ウェラーの向かって左に陣取るベースは、ジェイク・フレッチャーという人。細身にロングヘアで、見た目ほかのメンバーより若そうに見える。この日のライヴ、ほとんどのメンバーがコーラスもこなしていたが、この人は女性のように高めの声質だった。
ウェラーの向かって右に陣取るは、長きに渡り忠誠を尽くすスティーヴ・クラドックだ。もちろん、今回もテレキャスターやストラトキャスター、セミアコなどを駆使し、弾きまくっている。オーシャン・カラー・シーンとしての活動もあるのに、とにかく働き者だ。
そして、今回のキーマンと言えるのが、サックスプレーヤーだ。大柄でサングラスをかけて革ジャン姿で、見た目だけで既にインパクトがある。そして、バリトンとテナーのサックスを使い分け、フルート、そしてピアニカまでこなしていた。ポール・ウェラーのライヴでホーンが入るのはちょっと記憶になく、個人的に観るのは今回がはじめてと思う。
彼らを従えるウェラーは、御年65歳にして現役感がハンパない。Gジャン姿のときは細身でスタイリッシュに見えたが、脱いで薄いブルーのTシャツ姿になると胸板ががっちりしていて、着痩せする人なのかもしれない。今回特徴的だったのはセミアコを多用していたことだが、曲によってはギブソンSGも使っていて、スティーヴとのダブルSG状態になるときもあった。
セットリスト的には、近年の作品『Fat Pop』『On Sunset』からの曲を軸にしつつ、ソロキャリアを横断的に、そしてスタイル・カウンシルの曲を加えてくる編成だ。序盤では『My Ever Changing Moods』が早くも放たれ、中盤には『Shout to the Top!』も。このとき、フロアの熱狂ぶりは一段ギアが入ったようになる。サックスが加わることで、オリジナルとも数年前に観たときのライヴとも異なる、新たな曲に生まれ変わっている。
ソロ初期の曲も、嬉しいところだ。セカンド『Wild Wood』からの『All the Pictures on the Wall』『Hung Up』、ファーストからの『Above the Clouds』。『Into Tomorrow』は、後半がバンドメンバーのみでのインプロヴィゼーションになり、ツインドラムからベースソロ、ギターソロ、サックスとメドレー式になり、その間ウェラーは袖に捌けていて、最後にバンドに加わって締めるというスタイルだった。
ジャムの『Start!』からの『Peacock Suit』で本編を締め、アンコールは2回。『You Do Something To Me』『Mayfly』が、この日の日替わりセットだったようだ。そして、オーラスは必殺の『The Changingman 』だ。
セットリスト
Rip the Pages Up
Nova
Cosmic Fringes
My Ever Changing Moods
A Man of Great Promise
All the Pictures on the Wall
Stanley Road
Glad Times
Village
Hung Up
Fat Pop
More
Shout to the Top!
Jumble Queen(New song)
Saturns Pattern
Nothing(New song)
Above the Clouds
Into Tomorrow
Start!
Peacock Suit
アンコール1
Old Father Tyme
Headstart for Happiness
That Pleasure
You Do Something To Me
Broken Stones
Mayfly
アンコール2
The Changingman
コンスタントに日本に来てくれているポール・ウェラーだが、今回は2018年以来6年ぶりの来日になった。合間にコロナ禍があったので致し方ないが、その間この人は休むことなく、アルバムをリリースしたりオーケストラと共演したりしていた。今回の来日も、仙台や札幌まで遠征するなど、かなり精力的だ。
この日のライヴでも、新曲が2曲演奏された。ということはほかにも曲の書き溜めがあり、近いうちに新譜がリリースされるかもしれない。活動ペースは鈍る気配がなく、驚異的ですらある。身内関連で日本との縁もできたので、これからもコンスタントに日本に来てくれることを期待している。
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