『攻殻機動隊 SAC_2045 最後の人間』を観た
電脳や身体能力が驚異的に向上した、ポスト・ヒューマン。そのひとりであるミズカネスズカの襲撃を受けるも、なんとか「1A84」を守った公安9課。草薙素子は、江崎プリンに1A84の解析を指示する。1A84との対話の中で感染してしまったプリンは、久利須総理を暗殺しようとするが、逆にSPに射殺されてしまう(実はSPが感染していて、プリンはSPを狙っていた)。
行方不明になっていたトグサは、新東京にいた。かつての大戦で壊滅状態だった都市は復興を進めていて、人々はこの地を「N」と呼んでいた。そしてポスト・ヒューマンのシマムラタカシも、ミズカネと共に新東京にいることが判明。ふたりは、米帝の原子力潜水艦を強奪していた。公安9課は新東京に向かうが、米帝も戦力を指し向けていた。
Netflixで放送された『攻殻機動隊 SAC_2045』のシーズン2を再編集し、追加映像を加えたバージョンの劇場公開になる。前作『持続可能戦争』は2年前に公開され、謎を残したまま終わっていた。本作は完結編になり、ひとつの回答が提示されている。
本シリーズの新キャラであるプリンが、キーパーソンになっている。序盤に一度は死んでしまうが、全身義体で復活。前作ではやたらとバトーの身辺に詳しかったが、それはなぜか。そして、なぜプリンという名前なのかが、本作で明らかになる。実は、彼女もほぼポスト・ヒューマンであることが判明。タチコマとの相性もいい。素子は彼女に新たな可能性を感じていて、自分に近い存在ではないかと思っているのでは?と思わせる瞬間がある。
新東京は「N」と呼ばれ、人々はポスト・ヒューマンのラスボスであるシマムラタカシを「ビッグ・ブラザー」と呼んでいた。ビッグ・ブラザーはジョージ・オーウェルの小説『1984年』における統治者的存在で、「N」はシマムラが作ろうとした理想郷ということのようだ。ただ、小説では絶対的な支配者のイメージだが、シマムラはそこまで独善的ではなく、どこかで人と人との結びつきの可能性を信じていると思える。
全編3DCGでの作画につき、新東京などの都市をはじめ、背景、メカ、アクションシーンなどの描写は素晴らしい。ただその代わり、人物については、立体感が生き物というより作り物のように見える瞬間があり、少し違和感がある(が、許容はできる)。
声優陣は、素子の田中敦子、バトーの大塚明夫、トグサの山寺宏一、タチコマの玉川砂記子など、主要キャストはお馴染みの面々だ。プリンは潘めぐみ、傭兵部隊出身で9課の面々に「おもしろ」と呼ばれている男は、津田健次郎。シマムラタカシは、一時はタチコマを介して会話していたが、終盤で自ら話す。林原めぐみだった。
過去シリーズへのオマージュと思える描写も、いくつかあった。終盤で多くのコードに接続されたシマムラは、押井版『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』の素子のイメージショットを彷彿とさせた。ラストでの素子のダイブは、まんまだったのでニヤニヤしてしまった。
士郎正宗の原作を基点とし、アニメ版は何種類もの攻殻が存在している。それぞれに独自性を保持しつつ、関連性もある。そして本作での「N」には、同じく士郎正宗の原作『APPLESEED』での理想郷とされる都市オリュンポスと通じるものがあるのでは、と思いを馳せてみる楽しみ方もある。
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