椎名林檎『加爾基 精液 栗ノ花』
椎名林檎の新譜発売日は、2月23日となっている。だけど実際のところは、発売日前日の夕方には出荷されて店頭に並んでいることが多いし、増してや日曜日に出荷されることはまずありえない。というわけで昨夜退社時にHMVに寄ってみると、やはりあったので買って来た。昨夜のうちに聴いてもよかったのだが、テレビ出演を見届けてからにしようと思い、今日になってからCDプレーヤーにのせた。
全11曲44分44秒というヴォリュームは、最大78分まで収録可能のCDのフォーマットにおいては、一見物足りない。だけど聴き終えてみて短いなとは感じなかったし、時間の長い短いといったところを超えたところに到達している。今回も前作同様にシンメトリーになっていて、曲名と曲順、そして前述の収録時間、更には製品番号までという懲りよう(笑)。演奏はオーケストラが基調となり、多数の民族楽器を駆使。前2作及びライヴでの彼女の重要なパートナーだったバンド、虐待グリコーゲンのクレジットはない。
『無罪』『勝訴』のときのようなロックミュージックではなく、カラオケで歌われそうな曲も少ない。周到なプロモーションが功を奏し、その勢いでセールス的には成功を収めるかもしれない。だけど評価の方は、賛否真っ二つに分かれそうな気がする(特にファンの)。しかしそれでも、ここに凝縮された音の世界は素晴らしい。ここ数年の日本のロックは、すごい領域に到達しつつある。メインストリームでは宇多田ヒカルが、そしてアナザーサイドでは、cocco、ミッシェル・ガン・エレファント、スーパーカー、コーネリアス、ナンバーガールといった面々が。そしてこの作品と椎名林檎は、そうした流れの先頭に躍り出た。
個人的には『勝訴ストリップ』を聴いたとき、日本のアーティストにこれ以上の作品を求めないと思った。それから約3年が経ち、その思いは『加爾基 精液 栗ノ花』によって塗り替えられた。
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