ボブ・ディラン(Bob Dylan)”ROUGH AND ROWDY WAYS” WORLD WIDE TOUR 2021-2024@東京ガーデンシアター 東京公演5日目
今回の来日公演、チケット代高額設定につき、ワタシは最も安価なA席を入手していた。しかし、はっきり言って売れ行きは今一つで、どの公演でもA席チケットは入場時にS席に交換する対応がされていた。想定よりステージに近くなったのはいいが、価格設定と公演会場の規模は適切ではなかったと思うし、空席が明らかな状態になっているのが、ディラン側に申し訳なかった。
定刻の2分ほど前に、客席から自然に拍手が起こった。そのまま場内が暗転し、ボブ・ディランとバンドが登場。完全に暗くはならず、客席では手元がしっかり確認できる状態。『Watching the River Flow』でスタートするが、ディランがフリーでピアノを弾き始めたように見え、メンバーが少しずつ合わせてバンドとして整ってから、ディランが歌い始めた。
前日は2階席正面やや右のブロックで、全員黒づくめの衣装の中、特にディランとギターのボブ・ブリットが機材と同化してよく見えなかった。今回は向かって左前方のブロックで、ディランはじめ全員の動きが見えた。バンドの5人はディランを囲むように陣取っているが、全員がほとんどディランに視線を向けながら演奏しているのがわかった。わずかな変化、ちょっとのアドリブをも見逃さないようにしていると感じた。
ボブ・ブリットは右足をディラン側に踏み出してギターを弾いていたが、大半が直立不動状態だった。一方ダグ・ランシオ側は比較的スペースに余裕があり、適度にポジションを変えながら弾いていた。恐らく、ダグの方がリードギターだったのではと思われる。ドラムのジェリー・ペンテコストは、大柄なのか立ってプレイしているのではと見て錯覚させられるが、恐らくは座ってプレイしていたと思う。それだけ存在感があった。
ドニー・ヘロンはペダルスティールにバイオリンにギターにと、いろいろこなすマルチプレーヤーで、このひとが発する音がクラシックでありながら新しいというディランの世界観に大きく貢献しているのではと思った。そしてトニー・ガーニエは、ウッドベースとエレキベースを使い分けを結構頻繁にやっていて、また適宜バンドに指示出しをしているようにも見えた。
ディランは、曲間やイントロが長い曲のときには座ってピアノを弾いていたが、ほとんどにおいてはスタンディングでピアノを弾きながら歌うスタイルだった。ダグやブリットが大柄なこともあり、ディランの小柄さが一層目立つ。が、声は出ているわピアノはほぼ弾きっぱなしだわで、改めてそのバイタリティーには恐れ入る。
東京最終公演だから、なんてことはないと思うが、特に演奏が充実していて、発せられるエネルギーの巨大さに圧倒された。1曲1曲がステージで大作へと変貌していて、特に中盤の『Crossing the Rubicon』からは、毎回がクライマックスのようだった。これらがあの地味なアルバム『Rough And Rowdy Ways』からの曲とは思えず、いい意味での大幅な裏切りだ。
『Gotta Serve Somebody』ではふたりのギタリストによるソロ合戦があり、『I've Made Up My Mind to Give Myself to You』を経て、いよいよ日替わりセットリストに差し掛かった。まずは『That Old Black Magic』で、これは日替わり前の定番に戻してきた。東京最終はこうするかと、少し納得。
しかし、『Mother of Muses』を経て、更に変更いや追加がされた。その場ではわからなかったが、後でネットしてグレイトフル・デッドのカヴァー『Brokedown Palace』と知った。この曲は、東京3日目で演奏されていた。演奏前、トニー・ガーニエがボブ・ブリットにギターを替えるように指示していたので、ブリットはこの日セットリストに追加されていることをうっかり忘れていたのかもしれない(もしかすると、事前には設定されず、急遽その場で追加が決まったのかもしれない。とすると、他のメンバー動じなさすぎる)。
新譜の曲でありながら、リズムが60年代のディランっぽい『Goodbye Jimmy Reed』を経て、ラストは『Every Grain of Sand』。すべてが終了し、ディランは少しだけ前の方に足を進めると、ドヤ顔ならぬドヤポーズを決めてくれた。
セットリスト
Watching the River Flow
Most Likely You Go Your Way and I'll Go Mine
I Contain Multitudes
False Prophet
When I Paint My Masterpiece
Black Rider
My Own Version of You
I'll Be Your Baby Tonight
Crossing the Rubicon
To Be Alone With You
Key West (Philosopher Pirate)
Gotta Serve Somebody
I've Made Up My Mind to Give Myself to You
That Old Black Magic
Mother of Muses
Brokedown Palace
Goodbye Jimmy Reed
Every Grain of Sand
1992年秋、ボブ・ディランのデビュー30周年を記念したライヴが開催された。ディランゆかり、あるいはディランをリスペクトするアーティストたちがディランの曲を歌い、終盤に本人が登場するアニヴァーサリーライヴだった。当時、ロックアーティストが30年活動することは快挙だったし、ワタシもそう思った。
そして今年は2023年で、あれからもう31年が経過しているが、ディランは未だに現役アーティストとして活動している。初ディランライヴが94年武道館のワタシは、後追いの世代と自認しているが、いつのまにか中堅どころになった感がある。そうさせてしまうディランは前人未踏の怪物だが、本人はきっと自分のするべきことをしているだけ、という感覚なのかもしれない。
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