ボブ・ディラン(Bob Dylan)が執筆した『タランチュラ』
2016年にノーベル文学賞を受賞した、ボブ・ディラン。歌詞による世界観が評価されてと思われるが、23歳のディランが小説『タランチュラ』を執筆していて、後に1971年に刊行されている。日本では作家の片岡義夫が翻訳し、1973年に刊行。いったんは絶版となるも、2004年に復刊している。
読んでみたが、小説のようでもあり、散文詩のようでもある。約50の短編によって構成されていて、イマジネーションの世界観を繰り広げているようでもありつつ、時に実在する政治家や映画俳優の名前なども見受けられ、現実社会を風刺しているようにも受け取れる。
内容を理解するのは、正直言って困難。ただ、文体のテンポがよく、すらすら読めてしまう。読んでいると脳内に音楽が流れるような感覚に包まれる。大げさではなく、これまであらゆる文章を読んできて体験することのできなかった、未知の領域を覗き込んだような気持ちにさせられる。
ここで書かれている文体は、パティ・スミスが長年続けているポエトリーリーディングのルーツに思えるし、もしかしたらルー・リードの世界観にも通ずるかもしれない。彼らがディランをリスペクトし、影響を受けているのは知っていたつもりだが、文章の側面からの継承を感じることができた。
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