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ビョーク(Björk)「Biophilia Tokyo」@日本科学未来館

公開日: : 最終更新日:2023/02/11 Björk ,

Björk「Biophilia Tokyo」

展示を観に日本科学未来館に来たことは何度かあるが、ライヴで来るのはもちろんはじめてのこと。ステージセットは、天井に地球(ジオコスモス)があるシンボルゾーンに組まれていて、全方位型のセンターステージだ。楽器は、ドラムセット、プログラミングセット、パイプオルガンとガムレステ、グラヴィティ・ハープが、それぞれ四隅に設置されている。ワタシはAブロックの番号が早い方で、ドラムセット側の最前列に陣取った。

定刻を少し回ったところで、外人スタッフによるアナウンスがあり、通訳がメッセージを伝える。家に帰って楽しむのではなく、今この場で楽しんでください、と。つまり、撮影録画録音はするなということだ。この後、ドラマー、プログラミング、コーラス隊が登場し、イントロが始まる。少しするとどよめきが起こり、つまりが登場した。

『Thunderbolt』のとき、中央上部からシンギング・テスラコイルが降りてきた。プログラムのビートとシンクロして火花が走るという具合。ワタシのすぐそばのドラマーは、基本はシンセドラムだが、曲により鉄琴やパーカッション、また、ハングという、鉄鍋のような形の表面をさわることで音色を発する不思議な楽器も使っていた。

プログラミングはワタシと真反対のポジションだったので、細かい動きまではわからなかったが、時にシンセパーカッションも駆使し、電子ビートを出していた。リアクタリングらしき機材があることも確認していたのだが、どこかで使ったのかな。パイプオルガンとガムレステは、人間が弾くのではなく、どうやら自動演奏だったようだ。

コーラス隊は20人くらいいて、みな裸足だった。よく見ると、背格好も体型もバラエティに富んでいて、統制の取れた集団というよりは、ある程度の自由さを認めているようだ。ゴールド基調の衣装が大半だが、ブルー基調の衣装の人も少数いる。コーラスのパートで区別されている?

さてビョークだが、連獅子やトイ・プードルを思わせる、オレンジ色の爆発したカツラをかぶっていた。ドレスはブルーを基調としたミニスカで、右側だけマントのようになっている変則的なものだ。靴は結構あげ底。マントを自分で踏みつけてしまいそうで、こっちが勝手に心配してしまう。顔は白塗りでぱっと見少し怖いが、時折見せるおどけた表情や、にこっと笑ったときの表情がたまらなくいい。

ツアータイトルよろしく、曲はほとんどが『Biophilia』からになっている。上部にはスクリーンが8面並び、宇宙や月や稲妻や細胞といった、規模の大小を問わず生命にかかる映像が流れている。コンセプトがあまりにも徹底しているので、『Pagan Poetry』のイントロが流れた瞬間は、場内からどよめきが起こった。ただ、このコンセプトでこのステージセットなら、『Hyperballad』が落ちても納得できる。

全方位型ステージであることを、もちろんビョークは承知している。ステージ上を満遍なく動き回り、時には更に足を踏み込んで客席ににじり寄ってくる。曲により、コーラス隊をまるまる従えるときがあるのだが、中盤、VJにトラブルが発生したのか、なかなか次の曲が始まらないときがあった。コーラス隊が、即興でコーラスをアカペラで歌ってつないでくれた。

本編終盤、ついにグラヴィティ・ハープが稼動。振り子がゆっくりと揺れるが、正直、どこでどんな音が出ていたのかはわからなかった。そして本編ラスト、まず『Cosmogony』でコーラス隊はじめメンバーが捌けていき、ビョークひとりになる。ビョークはiPadを操作した後『Solstice』を歌い、ここでステージを後にした。アンコールは、ドラマーによるハングの伴奏で『One Day』。エモーショナルな原曲と異なる、ソフトなアレンジだ。この後メンバーが全員生還し、ビョークが彼らを紹介。『Náttúra』では映像が噴出するマグマになり、コーラス隊もかなりフリーに躍り狂う。彼女たちは、マグマを表現しているのだ。

そしてオーラスが、『Declare Independence』だ。再び、シンギング・テスラコイルが降りてくる。『Náttúra』で入ったギアが更に上がり、このライヴの中で最もフィジカルさが発揮される。ビョークの「raise your flag」に続く「higher,higher」という掛け合いは、コーラス隊だけでなくオーディエンスをも巻き込んだ大合唱となる。これ、2008年の武道館やつい先週のフェスティバルでも体感済みだが、会場が狭いことの優位性を、このときほど実感したことはない。

ビョークは、フェスティバルのヘッドライナーを務める一方、今回のようにスペシャルかつオンリーワンなことをやっている。つまり、音楽シーンのトップに君臨しながら異端のアーティストなのだ。同じ時代を生きることができてよかった、同じ時間と空間を共有することができてよかったと思える、数少ないアーティストのひとりだ。

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