ナンバーガール(Number Girl)無常の日、ライヴビューイングで観た
2002年に解散し、2019年に再結成したナンバーガール。コロナ禍をはさみ、約4年の活動を経て、今年ぴあアリーナMMの公演で解散することに。ワタシはチケット争奪戦には敗退したが、ライヴビューイングでライヴを楽しむことにした。
開演2分前から映像が始まり、予定を数分過ぎたところでテレヴィジョン『Marquee Moon』をSEにして4人が登場。序盤で早くも『透明少女』『Omoide In My Head』が演奏されてしまう。そして、向井の「福岡市博多区からやって参りました、ナンバーガールです」というMC(この後何度も連呼される)。
ステージ上には、ライト以外に装飾はない。両サイドのスクリーンに映像が流されていて、恐らくそれがライヴビューイングやスペシャ配信で流れている映像だと思う。カメラ設置が多く、スイッチングが頻繁にされてしまうのは、最初は追いつけなかったが、段々慣れてくる。ドラムセットの脇にもカメラマンがいて、バンド目線で客席を臨むアングルも楽しめた。
田渕ひさ子が白シャツで、ほか3人は黒基調。4人とも、イヤモニをしていなかった。中尾憲太郎は向井の方を向きながらベースを弾いていて、つまり客席側には半身の状態。エフェクターも、その向きにセットされていた。大柄の体格を駆使して弾きまくるパワーベースは、日本のロックバンドでは異色だろう。ドラムのアヒト・イナザワは、その運動量の多さもあっていち早く汗を飛ばしていた(いや、ほか3人が汗かかなすぎる)。
演奏は、アヒト・イナザワによるカウントか向井のリフで始まっていた。向井は、クリーム色と赤のボディの2本のテレキャスターを使い分けてかき鳴らした。リズムギターに徹していたわけでもなく、決めとなるリフはこの人が担うことが多かった。ヴォーカルは、いつも通りではあるがだいたいがシャウトで、歌詞はあまり聞き取れない。が、このバンドの場合はそれでよい。
そして、ギターの田渕だ。ライヴを映像として観られることの利点は、演奏しているアーティストをアップで映してくれることだ。これまでにも驚かされてきたが、細身で華奢、決して身体能力に優れているとは言い難いにもかかわらず、ジャズマスターを唸らせまくっている。『透明少女』のイントロでは飛び跳ねながらイントロを弾き、『NAM-AMI-DABUTZ』のリフの切れ味の鋭さは圧巻だ。ジャズマスターはボディの塗装がかなり剝げていて、それはこの人のギタリストとしての歴史が刻まれていることの証だ。
これまで何度かライヴを観させてもらっているが、ほとんどが張り詰めた空気のまま一気に押し切るスタイルだった。しかし今回は、ほぼ1曲ごとに間を置いていて、各曲を丹念に演奏しているように見えた。メンバーも、このステージを楽しんでいたのではないだろうか。
向井は『U-Rei』の間奏でタバコを4本吸い、中尾のエフェクターをいじり、田渕のプラグを抜き(田渕がすかさず入れ直す)、伸びる人形を取り出して腕や足を引っ張り、それを演奏中の中尾や田渕にもさせたり、と、奇行が爆発。缶ビールを飲みほしてはスタッフが替えを持ってきていて、最終的に4本は飲んだかな。終盤では間奏時に葉巻を吸い、火を消しきれずにビールをかけて消火していた。
ライヴは、中盤にブレイクタイムを設け、最初の解散前の若きメンバーの宣材写真やライヴフォトなどをスライドショー形式で流していた。しかし、最後が加工しまくったプリクラ写真で(笑)、手書きで今日の日付が入っていた。向井はMCも頻繁にあり、配信や映画館で観ている人に対してもコメントしてくれた。ワタシがいる劇場内も、このとき沸き立った。
『タッチ』『I don't know』で本編を締め、アンコールでついに『Iggy Pop Fan Club』を。これで締めるかなと思いきや、連続で『Tranpoline Girl』を放ってくれた。ここで客電がつくが、なんとメンバー生還。オーラスは、この日4回目となる『透明少女』だった。3時間弱という長さは、ナンバーガールとしては異例ではないだろうか。
2002年の解散は、中尾の脱退を受けて向井が決断した、悲痛さが漂う幕切れだった。今回は、メンバーも歳を重ねてより大人になったこともあってか、湿っぽい感じにはせず、明るく楽しく終えたいと思ったのかもしれない。バンドがその生命を終える解散には、涙や悲しさや寂しさを伴うのがほとんどだが、こういう解散があってもいいのではと思う。向井は、2日前の「スッキリ」出演時、ローン返済に困ったらまた再結成するという冗談を言っていたが、理由はさておき、将来的にまたナンバーガールを観られることを期待してもいいのかもしれない。
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