トラヴィス(Travis)The Invisible Band In Concert Plus The Classic Hits@EX-Theater
今回のツアーは、2001年リリースの『The Invisible Band』20周年アニヴァーサリーとアナウンスされている。個人的にはじめてトラヴィスを観たのが2001年フジロックで、まさにこのアルバムを引っ提げての出演だった。あれから、20年(21年)が経ったのか。
定刻を10分ほど過ぎたところで客電が落ち、ステージ向かって左の袖から4人が入場。まずはアルバム『The Invisible Band』全曲演奏で、『Sing』からスタート。アンディ・ダンロップがスタンドに固定されたバンジョーを弾き、フラン・ヒーリィが切々と歌う。
早速フランによるMCが入るが、東京のオーディエンスに対する挨拶の後も、更に話し続ける。アルバムや次に演奏する曲について語って、そして『Dear Diary』へ。つまり、淡々と全曲を演奏するのではなく、ストーリーテリングのアプローチを取っているのだ。これには驚いた。
そのフランは蛍光ピンクに見えるド派手なスーツ姿で、インビジブルどころではない。向かって左のダギー・ペインはほぼ直立不動で、低く構えてベースを弾く。フランのほぼ真後ろに陣取るニール・プリムローズの刻むリズムは、CDで聴くよりも迫力がある。この人とフランは、キャップを被っていた。
個人的に最も注目したのは、ギターのアンディだった。CDで聴く限りでは4人の力量のバランスが取れているように思えるが、ここではこの人のリフがリードしているように、ワタシには聴こえた。ギターはおおむね前屈みになって弾き、それだけでなく、曲によってはキーボードも弾き、更にはノートPCを操ってSEをコントロールするなど、多彩ぶりに感服させられた。
アルバムを曲順もそのままに演奏するので、フランはほぼ1曲毎にギターを交換。ストラトキャスターと、セミアコを2~3本は使っていただろうか。顔面に年輪は刻まれているが、体型はほとんど変わっていないように見え、小柄で軽そうな体で何度も跳び跳ねる。セミアコをチューニングしながらしゃべっていると、アンディが即興でキーボードを弾いていて、和やかな雰囲気になる。
アルバムラストの『The Humpty Dumpty Love Song』が終わり、4人はいったん袖に捌ける。そして第2部になり、アンディは上着を脱いでシャツ姿、フランはオーバーオールに着替えていた。『Writing To Reach You』のイントロがオアシス『Wonderwall』に似ていることを自ら話すと、2コーラス目ではなんと『Wonderwall』をそのまま歌ってしまった。
『Driftwood』はさておき、『Selfish Jean』はどうやら日替わりセットリストだったようだ。『Closer』では、フランはサビをオーディエンスに歌わせ、そして必殺の『Turn』へ。ここまで来ると最早無双状態だが、2コーラス目をダギーが歌い出したときにどよめきが起こったのも、なんだか嬉しかった。ここに集まっている人たちは、わかっているのだ。
フランは2階席のオーディエンスにも立つよう促し、そしてこちらも不動のアンセム『Why Does It Always Rain On Me?』へ。フジロックではほんとに雨が降る中で聴いたことがあるが、ここではバンドとオーディエンスを結びつける曲として機能していた。
更に、とてもとても古い曲とフランが言って始めたのは、ファーストアルバム『Good Feeling』からの『U16 Girls』だ。フラン、ダギー、アンディの3人が揃って「Na nananana…」と歌う出だしは、駆け出しで粗削りだった頃の彼らの原点を感じさせる。そしてオーラスは、AC/DCのカヴァーで『Back In Black』だ。トラヴィスとハードロックチューンは一見ミスマッチだが、彼らはカヴァーというより自分たちの曲として歌っていた。
セットリスト
第1部:『The Invisible Band』全曲演奏
Sing
Dear Diary
Side
Pipe Dreams
Flowers in the Window
The Cage
Safe
Follow the Light
Last Train
Afterglow
Indefinitely
The Humpty Dumpty Love Song
第2部:The Classic Hits
Writing to Reach You(with “Wonderwall”)
Selfish Jean
Driftwood
My Eyes
Closer
Turn
Why Does It Always Rain on Me?
U16 Girls
Back in Black
「見えないバンド」というアルバムタイトルは、音楽こそが主役という意味合いだと聞いたことがある。それは、ワタシたちオーディエンスが彼らの音楽に浸かるだけでなく、彼ら4人もその中に身を投じ、同じように浸かっていることも意味しているのではないだろうか。
個人的には、フェスでは何度も観てきたバンドだが、単独公演を体験するのは今回がはじめてになる。彼らの音楽にどっぷりと浸かり、言い様のない多幸感を噛み締めている。
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