トップガン マーヴェリック(結構ネタバレあり)
アメリカ海軍戦闘機パイロットのマーヴェリックは、昇進を拒んで現場に固執。最新型戦闘機のテストパイロットを務めていたところ、かつて自らも在籍していた海軍パイロットの精鋭を特訓する「トップガン」への転属を命ぜられる。某国の核兵器施設を迎撃する任務を遂行するメンバーを、若きパイロットたちから選抜する教官としてだった。
マーヴェリックは座学よりも実機訓練に重点を置き、自らも飛行して高い操縦技術と判断力で若きパイロットたちを翻弄する。メンバーの中には、かつてチームを組み訓練中に亡くなったグースの、息子ルースターがいた。彼は、願書を破棄されたために入隊が4年遅れたことで、マーヴェリックを恨んでいた。
コロナ禍のため公開延期を繰り返していたが、ついに公開された。『トップガン』から、実に36年を経ての続編だ。個人的に続編のあるべき姿とは、前作の継承と、作品単体での魅力の両立だと思っている。そして本作は、それをほぼ理想的な形で実現している。
冒頭に前作と同じメインテーマが流れ、その直後の空母に戦闘機が離着陸するシーンでケニー・ロギンスの『Danger Zone』が流れる。これだけで、観ていてテンションがあがる。
序盤、ルースターがバーでピアノを弾きながらジェリー・リー・ルイス『Great Balls of Fire』を歌うが、これはまさに前作でグースとマーヴェリックが歌っていたシーンの継承だ(このとき幼いルースターはピアノに腰かけていた。)。回想として前作の映像が流れ、そして悲劇のシーンも続いた。マーヴェリックがルースターの願書を破棄したのは、パイロットにはなってほしくないという、彼の母の遺言を受けてだった。
マーヴェリックをトップガン教官に推薦したのは、かつてのライバルで海軍司令官アイスマンだった。教官としての任務に苦悩するマーヴェリックは、アイスマンに会いに行く。咽頭ガンで会話もままならないアイスマンはパソコンの文字入力で意思疏通を図り、その後にはかろうじて発せられる声でマーヴェリックを激励した。年を重ね、立場が変わっても、互いをリスペクトする姿勢は変わっていなかった。ものすごくいいシーンだ。
後半、いよいよ選抜チームが核兵器基地に向けて作戦を決行する。目標の爆破には成功するが、マーヴェリックは被弾し不時着して機体を離れる。敵機に襲われそうになるのをルースターが救うが、今度はルースターが被弾。ふたりは、基地に格納されていたF-14を奪取。つまり、親子二代でのマーヴェリックとのコンビが実現したのだ。
戦闘機による飛行や戦闘のシーンは、前作を凌駕している。序盤の最新型戦闘機テストでは、マーヴェリックは速度マッハ10に挑戦。成層圏を越えて飛行の限界に挑むさまは、SF的でもある。トップガンでの訓練は、敵基地の地理的条件などから、最新型ではなくF-28を適用。コンピューターの性能ではなく、パイロットの腕がモノを言うという展開にすることに成功している。どこまでが俳優による操縦で、どこからがプロフェッショナルの操縦なのか、境界を見つけるのは難しい。
訓練施設近くのバーを経営するペニーはシングルマザーで、かつてマーヴェリックと交際していた。今回再会し、そしてロマンスも再燃。彼女も、アイスマンと同様マーヴェリックの心の支えになる。観終わった後にネット記事で知ったのだが、ペニーは本作が初登場ではなかった。自宅でDVDを見返してみて、前作の序盤上司に叱責された際にグースが、中盤でメグ・ライアンが演じていたグースの妻が、マーヴェリックに「Penny Benjamin」と言っていたのを確認した(前者では字幕が「ベニー」になっていた)。
キャストは、マーヴェリックにトム・クルーズ。現在59歳だが、相変わらず自らの体を駆使していて、最早超人の域だ。冒頭とラストに登場する小型飛行機は、トムの私物だそうだ。今回は教官であり、ルースターの父親代わりのような存在でもあり、アクションをこなしつつ性格俳優的な側面も見せている。
アイスマンは、ヴァル・キルマー。咽頭ガンは役柄だけでなく、実際に闘病中だったそうだ。それでも強く出演を希望し、出番は短かったが作品に重みと深みを持たせることに成功した。現在はガンを克服していて、俳優業にも復帰するとのことだ。
ペニーは、ジェニファー・コネリー。ワタシが観たことがあるのは『ラビリンス/魔王の迷宮』と『地球が静止する日』。前者のときはまだ少女だったが、後者では科学者としてキアヌ・リーブス演じる異星人と対話していた。もっと、メジャーな役があっていいはずの人だ。
ルースターは、マイルズ・テラー。『セッション』『ダイバージェント』シリーズなど、既に「色のついている」俳優で、正直どうかなと観る前は思っていた。しかし、口ひげをたくわえたことでグースのアンソニー・エドワーズに風貌が近くなった。マーヴェリックと並んだときの身長差も、そっくりだった。慎重でいて血気盛んな面も持ち合わせる難しい役どころだったが、見事に演じていたと思う。
音楽は、ハロルド・フォーターメイヤーとハンス・ジマーという、2世代に渡るサントラ作曲家が並び立った。主題歌はレディー・ガガで、前作のベルリン『Take My Breath Away』をオマージュしたかのようなメロディーは好感が持てる。劇中にはデヴィッド・ボウイ、t.レックス、ザ・フーの曲も流れ、こちらも結構楽しめる。
監督は、ジョセフ・コシンスキー。『トロン:レガシー』で監督デビューし、トム・クルーズとは『オブリビオン』でタッグを組んでいる。エンドロールに入る直前、前作の監督だったトニー・スコットに捧げるというメッセージが掲げられた。トニーは、2012年に亡くなっている。
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