陽炎座(1981年)
劇作家の松崎は、品子という女と偶然の出会いを重ね、この不思議な体験をパトロンの玉脇に話す。その後、今度は品子に似たイネという女性と会い、彼女が玉脇の妻と知る。しかしイネは入院中で、危篤状態だった。松崎と玉脇は病院に行くと、松崎と出会う前に息を引き取ったばかりだった。
松崎は、品子も玉脇の妻ではないかと思い、下宿の女主人みおに尋ねてみる。イネは玉脇が留学中に出会ったドイツ人女性で、金髪碧眼を隠させて結婚、しかしその後、品子の家が伯爵の称号を得たいがために品子を玉脇と結婚させたとのこと。みおは、玉脇の元妾だった。そして品子から手紙が届き、松崎は金沢に向かう。
泉鏡花原作の小説を、鈴木清順監督で映画化。松崎と品子やイネのシーンは、現実とも虚構とも夢とも取れる、ファンタジックな描写になっている。実は玉脇が仕組んだことだと後半でわかり、金持ちが道楽で松崎をからかっているという図式だ。タイトルの「陽炎座」は、金沢で松崎と品子が入った奇妙な芝居小屋を指している。
キャストは、松崎に松田優作、品子に大楠道代、イネに楠田枝里子、みおに加賀まりこ、玉脇に中村嘉葎雄、松崎が知り合う活動家に原田芳雄。ほかにも、佐藤B作や内藤剛志も出演していて、豪華な顔ぶれだ。
大楠、楠田、加賀の三者は、いずれも妖艶な魅力を発している。作品のイメージを代表するのは大楠だが、個人的にはフリーアナウンサーのイメージが強い楠田の方がより気になった。調べてみたら、当時の劇場公開と日テレ退社がほぼ同じ時期だった。というか、日テレの局アナだったの!?
松田優作はアクション俳優から性格俳優への転身期になり、鈴木清順の禅問答のような演技指導に戸惑ったとのこと。しかし、ここでの経験が後の『それから』『華の乱』といった文芸作品につながっていっているのではと思わせてくれる。『それから』では、中村と義兄弟の間柄として再共演している。
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