テルミン博士のドキュメンタリー映画『テルミン』
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最終更新日:2021/11/03
Beach Boys/Brian Wilson ブライアン・ウィルソン
直接手で触れることなく演奏する電子楽器、テルミン。作ったのはロシアの科学者レオン・テルミン博士で、なんと1920年のこと。このテルミン博士の生涯を綴った、ドキュメンタリー映画『テルミン』を観た。
テルミン博士は、ニューヨークにて電子楽器テルミンを開発。水平及び垂直方向に電子棒があり、周辺の空間には電磁波が充満している。棒に手を近づけると電子音が発せられ、わずかな指の動きに応じて音も反応する。テルミン博士は、この楽器を単なる奇妙な音の出る箱としてではなく、立派な楽器として演奏できることを証明したかった様子で、何度か演奏会を開いてもいる。その後突然失踪し死亡説まで流れるが、実は祖国ロシアで7年間投獄された後、KGBの活動を手助けするための研究開発を続けていたそうだ。
その後テルミンはロシアの指導者レーニンの目に留まったり、ハリウッド映画の恐怖シーンの音響効果として多用されたり、多くのロックアーティストに愛され利用されたりした。映画ではブライアン・ウィルソンとトッド・ラングレンが登場。特にブライアンは、全米No.1ヒット『Good Vibrations』にテルミンを使用したときのエピソードを熱く語っている。
映画はテルミン博士と関わりのあった人物のインタビューを中心に構成されているが、その最たる人物はテルミンの名演奏家にして博士を生涯愛し続けたクララだった。博士失踪で離れ離れになった2人だが、それから何10年後になるのだろう、博士95歳クララ80歳という年齢のときに2人は再会。腕を組みながらニューヨークの街に繰り出すところで映画は終了している。奇妙な電子楽器に情熱を賭けた物語が、ラストは時を越えた素敵なラヴストーリーという仕上がりになっているのだ。博士は97歳まで生きて1993年に死去。クララもその後を追うようにして亡くなっている。
日本では2001年に公開され、当時恵比寿の劇場に観に行った。パンフレットを買ったのだが、文庫本の大きさで3冊箱入りの1000円。1冊目は映画のストーリーや解説を、2冊目はテルミンの楽器そのものに着目し、テルミンが使用された音盤を紹介。3冊目は、テルミンを設計したときの図面が8つ折りになったものだ。
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