ナンバーガール(Number Girl)@フジロック’21
公開日:
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最終更新日:2023/01/29
Fuji Rock Festival'21 テレヴィジョン, フジロック
開演前、スタッフによる機材セッティングの後、なんと4人がステージに現れて自分たちで音合わせ。1曲演奏してくれた。そして時間になり、テレヴィジョン『Marquee Moon』をSEにして登場。向井秀徳のベストフェイバリットソングだが、個人的にも大好きな曲およびバンドで、これだけでテンションが上がる。
オープニングは、なんと『タッチ』だ。解散前の活動時期では確かに1曲目に据えることが多かったが、成熟した今のバンドが取ったアプローチに意表を突かれた。そのままメドレー式に『SAPPUKEI』へとなだれ込む。
ステージには特に装飾もなく、映像の使用もない。ただ、ライティングは駆使されていて、曲により点滅・閃光などされ、演奏とシンクロしていた。メンバーは、白シャツの田渕ひさ子以外は黒基調のいでたちだ。
中尾憲太郎は長身で大柄、その体を前後に大きく振りながらベースを弾きまくる。ドラムのアヒト・イナザワは、多くは向井に視線を送りながらプレイしていたように見えた。フロントマンの向井は、赤ボディのテレキャスターを弾きながら歌い、時にはがなってもいた。
今回、ワタシはステージ向かって右前方に陣取っていて、つまり田渕ひさ子側だった。彼女のプレイがよく見えて、そしてその凄まじさに圧倒された。向井と田渕の2本のギターの絡み合いが、このバンドの最大の魅力と思うが、より比重が大きいのは田渕のギターだ。
細身で小柄で華奢、しかし彼女のプレイはパワフルで、そして冴え渡っていた。ジャズマスターを45度にして抱えていて、向井や中尾よりも角度のある持ち方だ。ボディの塗装が剥げているのが見てとれたが、かなり使い込まれているのだろう。そして彼女は、鮮やかな指さばき・腕さばきで、ソリッドでメタリックで、そして官能的な轟音を発しまくっていた。
3人ともギター/ベースを交換することなく、1本で弾き続けた。向井は曲間にチューニングをすることが多かったが、音や演奏に影響はなかったようだ。向井のプレイはどちらかと言うと淡々としていることが多く、それでいて田渕とは異なるメタリックな轟音を発しているのだから、なんだか不思議だ。
バンドは、5月の日比谷野音公演が中止になってしまうなど、依然として思うように活動するのが難しい状況のはずだ。今回ホワイトステージのヘッドライナーを任されたのはまたとないチャンスと思われ、セットリストはキャリア総括のベストヒット状態になっている。観る側は激しく踊ることも声を発することもできず、オーディエンスとバンドとの融合によるライヴには、残念だがならない。のだが、圧倒的とも言えるバンドのパフォーマンスは緊張感を生み、観る側にびしびしと訴えてくる。
終盤は『OMOIDE IN MY HEAD』からの『I don't know』 で攻め立て、アンコールでは『IGGY POP FAN CLUB』を。向井は演奏を終えると、マスクをつけてステージを後にした。
実は、前日までは別のバンドを観ることを考えていたが、それを変えてナンバーガールを観ることにした。理由はいくつかある。単独公演のチケットが取りにくいこと、この先フェスやイベントに出たとしても、短縮版セットになると思われること。対して、このステージはフルライヴになること。などだ。
そしてもちろん、この選択は正しかった。2001年2日目にグリーンステージトップに出演したナンバーガールを、20年の時を経て再びフジロックのステージで観ることができたのだ。
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