装甲騎兵ボトムズ(テレビシリーズ)
アストラギウス銀河を二分するふたつの星系、ギルガメスとバララントは、100年に渡り戦争を繰り広げていた。戦争の末期、ギルガメス軍の兵士キリコ・キュービィーは、味方の基地を襲撃する謎の作戦に参加させられる。そこで軍の最高機密「素体」を目撃したため、軍から狙われる身となってしまう。
惑星メルキアのウドの街に流れ着いたキリコは、仲間を得たこともあり、徐々に人間性を取り戻していく。「素体/ファンタム・レディ/プロト・ワン」との邂逅を経て、キリコは戦いの中で自身の出生の秘密、神の存在、そして課せられた運命を知る。
1983年から1984年にかけて、1年間テレビで放送された。制作会社はサンライズだが、富野由悠季監督作とは別の路線でリアルロボットを追求し、極致にまで達した作品と言っていい。個人的にも大好きな作品で、 そのポイントはいくつもある。
まず、ストーリー展開が見事だ。全52話を、「ウド編」「クメン編」「サンサ編」「クエント編」の4つのフェーズに分けた。「ウド編」は、地下都市ウドというドメスティックな舞台での攻防だ。「クメン編」では、クメン王国独立運動にキリコは傭兵として加わった。「サンサ編」ではキリコが自身の過去と向き合い、また好敵手イプシロンとも決着をつける。視点がギルガメスからバララントに移った編でもある。そして「クエント編」では、それまでの謎と、神の存在が明らかになる。
「秘密結社」の存在が、「ウド」のときはよくわからず、何度か観ることでわかってきた。第1話でキリコが参加させられた謎の作戦は、元ギルガメスの兵たちで構成された秘密結社の一派で、ギルガメスが開発したパーフェクト・ソルジャーである素体を強奪するのが目的だった。その過程でキリコが素体に遭遇したことで、彼女はパーフェクトではなくなってしまう。ただ「クエント編」にて、それも「神=ワイズマン」の差し金だったことがわかる。
ウドの街には、『ブレードランナー』のイメージがある。SFカルト映画の傑作であtり、数多くの作品に影響を与えているが、時系列的にも『ボトムズ』は模倣が(あえてこう言おう)かなり早かった方だと思う。クメン王国の密林や河川での戦闘は、『地獄の黙示録』を思い起こさせる。最終話でキリコが乗り込んだワイズマンの内部は、『2001年宇宙の旅』のHAL9000とダブる。こういう小ネタ、嬉しい。
キリコたち兵士が乗り込むアーマード・トルーパー(AT)は、究極のリアルロボットだ。全長4メートルというサイズは、メカニックデザインの大河原邦男によると、手足を吹っ飛ばしてもコックピットが無事、人が横に立って直接会話できる、などを考慮してとのこと。キリコが廃材を使って自ら修理する場面が何度もあり、つまりこの時代での特殊な技術は使われていないと思われる。
壊れたら躊躇なく乗り捨て、乗り換える。キリコはスコープドッグをはじめ数種類のATを乗りこなしている。これは、それ以前それ以降のロボットアニメと決定的に異なっている。ほとんどのロボットアニメは、主人公が乗り込むロボットだけは終始変わらず、あっても中盤で交代したり改良されたりするくらい。『ボトムズ』では、クルマを乗り換えるのに近い感覚でATを扱っているのだ。
ニッチな路線で、ファンを獲得したのだろう。前日譚や後日譚などが、80年代から2010年代に渡り、OVAとして制作されている。
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