伝説巨神イデオン接触編・発動編
宇宙開拓の一環として、ソロ星で遺跡発掘調査を行っていた地球人。そこへ異星人バッフ・クランの部隊が降り立ち、戦闘が始まってしまう。遺跡の巨大メカは突如活性化して合体し、巨大ロボット「イデオン」に。地面に埋まっていたと思われていた遺跡は、宇宙船ソロシップとして離陸する。
戦力はバッフ・クランが圧倒的に上回っているが、無限エネルギー「イデ」 の力により、イデオンとソロシップは何度も危機を乗り越える。地球人もバッフ・クランも、イデには意思があると感じ始める。やがて、バッフ・クランの総司令ドバの次女カララは、ソロシップ艦長のベスと親しくなり、ベスの子を宿す。
アニメ制作会社サンライズが『機動戦士ガンダム』の後に手がけた作品で、1980年にテレビシリーズとして放送された。しかし視聴率が伸び悩み、全43話予定が39話で打ち切られてしまう。ところが、打ち切り後から人気が再燃し、劇場化が決定。39話分の総集編を『接触編』、幻となった残り4話を中心にした『発動編』の2部構成とし、トータル約3時間のサイズで1982年に同時に公開された。
『接触編』は、90分に凝縮する都合があったとはいえ、かなりの駆け足だ。テレビの前半戦では、ソロシップの前に立ちはだかったギジェの存在が薄くなってしまったのは、なんとも勿体ない。そうした中、コスモが負傷してカララから輸血を受け、昏睡状態の中でイデと対話したシーンは、結構重要に思えた。
イデの意思は、地球人とバッフ・クランの2つの種族の和解だった。『発動編』の序盤、カララとジョリバをバッフ・クランの旗艦バイラル・ジンに転送し、ドバと対話させる機会を作る。カララは、人種を越えてわかり合い、その結晶としてメシアを宿したことを明かす。しかしドバは恥さらしだと言い放って、交渉は決裂してしまう(テレビ版では、ここでイデが発動している)。
特に『発動編』ではキャラクターが次々に、しかもエグい死に方をするので、その凄惨さといったら今観ても衝撃的だ。よくもここまで作ったな、描写したなと思わされる。コスモのヘルメットのシールドに吹っ飛んだ頭部が映り込むキッチ・キッチン、姉ハルルに顔面にだけ銃弾を打ち込まれて絶命するカララ、バズーカで頭を吹き飛ばされた5歳の女の子アーシュラ、蜂の巣状態になって力尽きたカーシャなど。エグい。エグすぎる。そして、最後には全員が死んでしまう。
個人的に何度か観ている作品だが、今回観たことで、今まではなかなか気が及ばなかったところにも気がつくようになった。
まず、ここでの表記は便宜的に「地球」「地球人」としてはいるが、ワタシたちが住む地球や地球人類とは同一ではない可能性がある。というのは、ドバも自分たちの地球という言い方をしていて、母星のことを地球という呼び方にしている節があるのだ。そして戦闘の終盤では、どちらの地球にも流星が飛来し、滅亡している。
少し細かいところでは、頭部を撃ち抜かれた直後に「オレはまだ何もやっちゃいない」と言って死んだハタリは、その他大勢的キャラだとずっと思い込んでいた。しかし彼はソロシップの操縦士であり、ベスの参謀格でもあり、セリフも結構あった。
終盤でイデオンを牽引していたのは、メインパイロットのコスモではなく、サブのデクだった。イデオンがデクを受け入れ、シンクロ率が高くなったのだ。イデはほんとうの敵としてドバの位置を示し、それを感じたのはデクだった。
バッフ・クランでは、ドバの終盤のセリフひとつひとつが重い。それまではハルルやカララのことを思い私怨が入り交じっていたのが、自分たちの母星が破滅した辺りから、この戦いが単にバッフ・クランと地球人との戦いではなく、バッフ・クランも地球人も終わらせて、次の種族に未来を託すというイデの意思だと気づく。それでも戦いをやめることなどできず、続けるしかなかった。
ガンドロワ第二射の瞬間にイデが発動し、ふたつの種族は滅亡する。それから、どれだけの月日が経ったのだろう。各キャラクターの精神が宇宙を駆け巡り、その先頭に立つメシアの導きによって因果応報の地を目指す。少し宗教がかった描写だが、不思議と宗教特有の空気感はなかった。
ソロシップをある意味何度も守り、メシアにバトンを渡す役割を果たしていたのが、1歳の赤ちゃんパイパー・ルウだ。赤ん坊としてのより純粋な自己防衛本能にイデは反応し、ソロシップにバリヤーを張り巡らせた。コスモやカララが表の主人公なら、この子は裏の主人公と言っていい。そして、ルウが死ぬ描写はされなかった。実はイデが発動した瞬間でも、この子はイデに守られて生き延びたのではと思ってしまう。
放送時や劇場公開時、『イデオン』はポスト『ガンダム』的作品と認識されていた。しかし、こんにち『イデオン』は『ガンダム』ほどには語られていない。『ガンダム』には続編やスピンオフが多々あること、ガンプラブームが今だ根強いことなどもあり、『イデオン』にはそれがないことも関係しているだろう。というか、『イデオン』は続編を作らないというより作れないのだ。『発動編』の時点で行くところまで行ってしまったし、あそこで終わらせたのは正しいと思う。
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