上條淳士『ZINGY』
最終戦争で、世界が無法地帯になってしまった20xx年。巨大組織B・メイソンのギルはTOKIOの支配を目論むが、少年ジンギーが冷凍睡眠から目覚める。ジンギーは、眠っている間にコンピューターによって脳や身体能力を強化されていて、そしてギル打倒をインプットされていた。ジンギーは、モップスやレディス・キッズらと組みながらギルに立ち向かう。
上條淳士が『TO-Y』の前に少年サンデーに連載していた作品で、コミックス全3巻に収まっていることから、約半年の連載だったと思われる。舞台は『マッドマックス2』や『北斗の拳』のようでありながら、ほぼ全編に渡ってギャグテイストになっている。雁屋哲を原作者に迎えているが、雁屋といえば世間的には『美味しんぼ』の、個人的には『男組』の原作者のイメージだ。がしかし、どちらのイメージとも本作は異なっているのと、『TO-Y』にもちょくちょくギャグテイストが散りばめられているので、上條の趣向なのだろう。
絵柄も、後の『TO-Y』『SEX』の洗練されたイメージとは程遠い。線による描画が大半で、残念ながらあまりクオリティが高いとは言えない。ただ、『TO-Y』の序盤も同等のタッチで、つまりは『TO-Y』の連載中に画力が飛躍的に向上したと思っている。
ストーリーが大詰めに差し掛かったとき、ジンギーの父親の存在が明らかになる。最終戦争前からB・メイソンと戦い続け、父である自分の記憶を消してジンギーを冷凍睡眠させていた男シンバだ。そして、ギルの父親にしてB・メイソン会長のドモンも登場。容姿が思いっきりデヴィッド・ボウイで、しかも作風に沿ってギャグいじりされている。「ユリイカ」のボウイ追悼特集号によると、上條はボウイに似せたドモンをいじることにためらいはなかったそうだ。
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