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テネット(ネタバレ注意)

テネット(ネタバレ注意)

ウクライナのオペラハウスを、テロ集団が占拠。テロを食い止めようとした特殊部隊に潜り込んでいた「名もなき男」は、身元がばれて拷問にかけられる。「男」は自殺しようとしたが、気が付くと船の中にいて、テスト合格と任務を言い渡される。任務とは、未来からやってくる敵と戦い、第三次世界大戦から地球を救うことだった。

「男」は、ある研究所で弾丸が逆行して拳銃に戻る現象を体験。相棒となるニールと合流して弾丸の出元を探り、武器商人セイターに行き着く。2人はセイターに取り入るため、彼の妻キャットに接触。画商の彼女の信頼を得るため、ノルウェーのオスロ空港の倉庫に保管されている贋作の絵の破壊を試みる。しかし謎の男と行き当たり、格闘戦になる。

主人公に名前はなく、メディアでは便宜的に「名もなき男」とされている。エンドロールでは、主人公の意味の「Protagonist」と表記されていた。ジョン・デヴィッド・ワシントンが演じていて、「ブラック・クランズマン」にも主演していた人。の息子だというのは、本作のプロモーションの中で知った。更に調べてみると、以前はプロのアメフト選手で、引退後俳優に転身したとのことだ。どうりで、身体能力が高いわけだ。

「男」の相棒でも部下でもあるニールは、ロバート・パディンソン。「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」の、セドリック役だった人。来年公開予定の「ザ・バットマン」に、主演することが決まっているそうだ。劇中は「男」の目線で進むことが多いが、ニールの存在と役割はある意味最も重要で、作品の根幹をなすと言っていいかもしれない。

セイターは、。最近は「ダンケルク」の英国軍中佐、「オリエント急行殺人事件」のエルキュール・ポアロと、どちらかといえばクリーンな役どころを観ていた。本作ではラスボス的存在であり、妻キャットをぼこったり拳銃で腹を撃ったりと、この人目線になるのはとても気持ちが悪い。まあ、こういう役すらこなせるのが、この人の懐の深さかもしれない。

キャットは、エリザベス・デビッキ。「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス」で、ソヴリン人の女王アイーシャ役だった人。劇中のキャットの役柄は、本来はそれほど重要ではなかったはずで、巻き込まれた形で重要な役を担わざるをえなくなったように思われる。このほか、が「男」への連絡役として、ちょこっとだけ出演している。

公開前から話題になっているのが、「時間が逆行する」現象だ。ストーリー上は、未来の科学者が巨大な時間逆行装置「アルゴリズム」を開発したものの、その威力を恐れて9つに分解し、過去のさまざまな場所に隠して自殺。それを発見し集めていたのがセイターで、自分の死期を意識し、「アルゴリズム」を完成させた後に自殺と連動させて地球を無にしようとしていた。個々の時間逆行装置は回転扉で各地に設置されていて、回転する向きによって、順行と逆行の2種類で過去に戻ることができる。

逆行で過去に戻ったとき、行った先での人の動きが観ていてややこしくなる。それと、いくつか移り変わる劇中の舞台が、本来の時間軸上はいつのことだったのかを考えると、混乱する。パンフレットを購入して読んだのだが、大学教授による時間逆行とそれぞれの舞台の補足があって、劇場で観た後にこれを読むと、ひと通りわかったような気にはなる。

音楽は、ノーラン作品常連のハンス・ジマーではなく、ルドウィグ・ゴランソンという人だった。「ブラックパンサー」「ヴェノム」なども手がけている人だが、映画作曲家としては新鋭の部類に入るとのこと。緊迫感と恐怖を煽るような音楽は、作品を引き立たせるのにひと役買っている。

監督は、。時間逆行は、描写が異なりはするが「メメント」で、舞台による時間経過の差異は「インセプション」「インターステラー」でも描かれていて、本作はそれらの要素を包含しつつ、一歩も二歩も先に進めたと思える。実写撮影に拘るのは、もちろん今回も軸がぶれていない。オスロ空港で飛行機を格納庫に突っ込ませるのは、CGではなく飛行機を買い取ってほんとうに激突させた。人の逆行の動きも映像マジックではなく、多くは俳優に実際にさせているそうだ。作品のたびにノーランにこんなことをやられると、他の監督は肩身が狭い思いをするのではないだろうかと思ってしまう。

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