機動戦士ガンダム(ファースト・テレビ版)
1979年の放送以来、何度となく再放送されている。ワタシは一応ファーストをリアルタイムで観た世代だが、改めて観てみると新鮮に思えた場面が多かった。そして自分の記憶に直結しているファーストガンダムは、テレビ版ではなく、劇場公開版三部作がもとになっていたことに気づいた。
テレビから劇場版にするにあたり、時間的にどうしてもカットせざるをえないのだが、カットされた箇所の大半は覚えているつもりでいた。ところが実際に覚えていたのは、イセリナの復讐、マ・クベのギャン、ブラウ・ブロのシャリア・ブルくらいだった。
ホワイトベースがジャブローから再び宇宙に飛び立って以降は、クライマックスの連続のはずなのだが、劇場版「3」でほぼフォローされているので、あまり新鮮味がなかった。対して前半は、当時はガルマの死以外とりたてて見せ場もないと思っていたが、今回いろいろ発見があった。
ローカルなジオンの兵士がガンダムに爆弾を仕掛け、アムロだけでなくホワイトベースの主要クルーで爆弾を取り外した、「時間よ止まれ」。元々ジオンの兵士だったのが、小さな子供たちを引き取って暮らしつつ、連邦・ジオンにかかわらず侵入者を迎え撃つ、「ククルス・ドアンの島」。これらは、一年戦争の本筋から考えれば重要性がほとんどないが故に劇場版ではカットされ、またその判断自体は正しい。ただ、戦争の中でこういうやりとりもどこかでしているだろうとも思えて、楽しく観させてもらった。
リアルタイムで観ていた当時は、何だかんだ言ってアムロ目線で観ていた。坊やで、何度となくいじけて、脱走もして、という、およそ戦争ものアニメの主人公とは思えないキャラクターだが、戦いの中で成長し、終盤はニュータイプとして覚醒していくさまは、やはりカッコよかった。
では現在は誰目線かというと、ブライトであり、リュウであり、スレッガーだった。ブライトは指揮官、リュウはパイロットだがアムロやカイたちの兄貴分でまとめ役でもあり、ブライトとも同じ目線でやりあえる。スレッガーはリュウの後任的立ち位置で、後半からの登場につき出番は短かったが、一見チャラそうでいて不思議な温かさを感じさせ、独特の輝きを放っていた。
目線が変わったのは、実生活でワタシが年を重ね、チームをまとめたり若い世代を指導したりする立場になっているからだろう。アムロ目線のときには憎たらしくて仕方がなかったブライトが、19歳にして連邦軍の新造戦艦を預かることになり、戦いを切り抜けていったその手腕はすごい。アムロを含め、他のクルーは目いっぱいやっているが、ブライトだけは正規の軍人とはいえ当然のように任務をこなしている。そのブライトもどこかでアムロたちと同じ目線を持っていて、だからこそリュウが死んだときに皆に混じって涙したのだ。
それにしても、波平さんこと声優永井一郎さんはすごい。ナレーションだけでなく、連邦とジオンの中年脇役キャラのほとんどを担当している。
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