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プレステージ(2006年)

プレステージ(2006年)

19世紀の。2人の若きマジシャン、アンジャーとボーデンは、師匠カッターについて切磋琢磨していた。あるとき水槽脱出マジックで、カッターの助手でアンジャーの妻が、脱出に失敗し死亡。原因は、ボーデンが彼女の腕をきつく縛っていたからだった。2人は決裂し、ボーデンはカッターのもとを去る。

以降、2人はお互いのマジックのタネを暴いて足を引っ張り合う。銃弾をキャッチするマジックで、アンジャーの妨害によってボーデンは指を2本失った。その後、ボーデンは瞬間移動のマジックを完成させ、そのタネをどうしても知りたいアンジャーは、助手オリヴィアをスパイとして送り込み、更にはボーデンの助手ファロンを監禁。ボーデンは、タネとの関連でニコラ・テスラ博士を示唆する。

監督で、「バットマン・ビギンズ」と「ダークナイト」の間に公開されている。アンジャーを、ボーデンをのダブル主演だ。2人とも腹黒くギラギラしていて、他の作品での比較的クリーンな演技を知っていて観ると、やりたい放題の暴れっぷりはむしろ痛快に思えてくる。2人の師カッターは、。つまり、ダークナイト・トリロジーの2人が、ここでも共演している。

オリヴィアは、。「ロスト・イン・トランスレーション」を経ていろいろ話題作に出始めた時期と思うが、ここでは自分に振り向かないアンジャーに不満を持ってボーデンに取り入ろうとするなど、結構軽い役どころだ。現在の存在感の大きさを思うと、この人にもこういう時期があったかと思ってしまう。ボーデンの妻が、レベッカ・ホール。本作がスクリーンデビューになるが、ボーデンと知り合った頃の幸せ溢れる表情から、後に不仲になってやつれて老けた表情への変貌は、既に演技派としての輝きを放ち始めている。

ニコラ・テスラ博士は、なんとだ。2000年代半ばは、まだまだ音楽活動に精力的だった頃のはずだが、ここでは老けメイクのせいか、むしろこの人の晩年の表情に近いものがある。博士の助手は、。『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』のシーザー、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのゴラムと、モーションキャプチャーでこなす役が多い人だが、ここでは珍しくまんま本人として出ている。

ここからはネタバレ。

アンジャーの瞬間移動マジックのタネを見ようとして、ボーデンは舞台裏に忍び込み、水槽の中で死亡するアンジャーを目の当たりにする。ボーデンは殺害容疑で逮捕され、死刑が確定。娘の身元引受人として獄中のボーデンの前に現れたのは、別名を名乗っていたアンジャーだった。ボーデンはトリックを探ろうとするはずと見越して、アンジャーは罠を張って妻を殺された復讐を果たしたのだった。

アンジャーの瞬間移動マジックは、ニコラ・テスラ博士が作った巨大な装置から発せられる電磁波によって、アンジャーのコピーを製造することだった。マジックをおこなう度に、ひとりは劇場の2階に転送されて観客の喝采を浴び、もうひとりは水槽の中で毎回死ぬ。果たしてどちらが本物で、どちらがコピーなのか。アンジャーは、自分がいつ死ぬかプレッシャーだったと言っていたが、もしかすると生き残っているのはコピーのコピーかもしれない。

ボーデンの瞬間移動マジックは、もう少しシンプルだ。替え玉を使い2人でおこなっていたのだが、その替え玉は助手のファロンで、実はボーデンと瓜二つの双子だった。2人は時と場合に応じて入れ替わり、2人でひとりになっていた。妻を愛したのはファロンの方で、オリヴィアを愛したのはボーデンだった。完璧に同一人物になり切るために、ボーデンが指を失ったときにファロンも指を切断した。2人とも指がなかったからこそ、替え玉ではなくひとりでの瞬間移動だと思わせることができたのだ。

ボーデンは処刑され、アンジャーは自分の方が上だとボーデンに思わせることに成功したかに思われた。が、アンジャーが巨大装置を処分しようとしたところにファロンが現れ、上記を明かしてアンジャーを射殺。ボーデンの娘(いや、正確にはファロンの娘と言えばいいのか)は、カッターが引き取った。

ノーランにせよ、クリスチャン・ベールやヒュー・ジャックマンにせよ、ほかに代表作や話題作が多数あることから、本作の立ち位置は極めて地味だ。が、マジック以上に、それを手掛けるマジシャンがトリッキーで、終盤に何度も起こるどんでん返しは、とても見ごたえがあった。隠れた名作、さすがはノーランと思わされる。

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