ジム・ジャームッシュ初期3部作:パーマネント・バケーション/ストレンジャー・ザン・パラダイス/ダウン・バイ・ロー
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ジム・ジャームッシュ ジム・ジャームッシュ, トム・ウェイツ, パリ
パーマネント・バケーション(1980年)
ジャームッシュ長編デビュー作で、大学の卒業制作で16ミリのフィルムで撮影したそうだ。舞台はニューヨークの裏通り。青年アリーは、いつものように街中を徘徊しては出会う人々とそれとなく会話を交わしている。やがてアリーはクルマを盗み、それを売ってできた金でニューヨークを船で飛び出し、パリを目指す。ラスト、サックスでかなり崩して演奏される『Over The Rainbow』が秀逸。
ストレンジャー・ザン・パラダイス(1984年)
ハンガリー出身でニューヨーク在住のウィリー。クリーヴランドのおばから連絡があり、自分を訪ねてくるいとこのエヴァを10日間だけ預かることに。はじめはうざがっていたウィリーだが、やがて彼女に親しみを覚えるようになる。10日後、彼女はクリーヴランドに発った。その1年後、ウィリ-はポーカーで儲かったので、友人のエディーと共にクリーヴランドに行き、エヴァを誘って映画に行ったり、フロリダに行ったりする。
ダウン・バイ・ロー(1986年)
ニューオーリンズ。チンピラのジャック、うだつの上がらないDJのザックは、共にハメられて逮捕され、投獄されて獄中で顔を合わせる。そこに、殺人を犯したというイタリア人旅行者のロベルトも加わる。陽気なロベルト、横柄なジャック、むっつりとしたザックと、3者3様だがなぜかウマが合い、脱獄に成功。珍道中を繰り広げながら、やがて女ひとりが営むレストランに行き着くことに。
ウィリーとジャック、そして「パーマネント・バケーション」に登場するサックス奏者をジョン・ルーリーという人が演じ、この人は3作の音楽も担当。言わば初期の常連であり、この時期のジャームッシュの盟友とも言えようか。ザックはトム・ウェイツで、これが映画初主演。主題歌も歌っている。ロベルトを演じるのはロベルト・デニーニで、この人もトム・ウェイツともども以降のジャームッシュ作品の常連になっていく。
どの作品にもメッセージ性はほとんどなく、ストーリー展開も地味で淡々としていて、観る側に解釈を委ねているところが多い。飄々とした登場人物たちや乾いた空気感など、こうした雰囲気が好きな人にとってはハマってしまうが、そうでない人にとっては理解するのが難しいように思える。ただ、社会の枠の中で生きていながらも精神的には自由人であるという、ジャームッシュの作品に一貫している主人公の人物像は、ここで既に垣間見ることができる。
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