東京事変 ニュースフラッシュ@東京国際フォーラム ホールA
2012年の閏日2月29日に解散した、東京事変。それから8年を経て、2020年の閏日2月29日に再生する。しかし、日本国内は新型コロナウィルス発生により、政府要請もあってイベントは軒並み延期や中止に。この状況の中、東京事変は予定通りにライブを敢行。批判と称賛が飛び交った。
しかし、主催者側は相応の備えをしていた。係員のマスクや手袋着用はもちろんのこと、観客に対しては入場時に手にアルコール消毒をおこない、ハンディの電子体温計で体温測定もしていた。こうした対応は、恐らく日本国内のイベントでははじめてのことではないだろうか。そして、今後の各種イベントのモデルになりうると思う。
定刻をわずかに過ぎたところで、客電が落ちた。ステージを覆う幕に「Insidents Tokyo 2004-2012」の文字列が浮かび、続いてボックス『Hard Disk』のジャケットがお目見えしてディスクが始動。メンバー5人がログインし、アクセプト(認証OK)。そして幕が上がると、既に5人がスタンバイ。『新しい文明開化』で、ライブはスタートした。
5人は色違いのロングコートを纏っていた。伊澤一葉はグリーン、浮雲はブルー、亀田誠治はブラック、刃田綴色はイエロー、そして椎名林檎はレッドだ。オリンピックの五輪の色にリンクかな。林檎は孔雀を思わせる大きな羽根を身につけていて、事変のトレードマークにリンクしているのだろう。
楽器交換などの曲間のインターバルは、最小限に留めていた。そして次から次へと曲を進め、演奏を披露。いろいろな状況を踏まえた上で、バンド側がはじき出したスタイルがこれなのだろう。以前の事変だと林檎の衣装チェンジにそこそこ時間を取っていたが、今回はステージ上でのチェンジ可能な衣装にしている。
伊澤はキーボードだが、曲によってはギターもこなす。そのさまは直立不動で、しかし視線は客席をロックオンしている。浮雲は上体を軽くスイングさせながらギターを弾き、亀田はうつむき気味でまるでシューゲイザーだ。刃田は、ワタシのポジションからはドラムセットに埋もれてあまり見えなかったが、その激しさと独特のリズム感は健在だ。
8年前の事変のライブと決定的に異なる、つまり進化していると思うのは、バックドロップの映像だ。恐らくは現在の林檎のパートナーの児玉裕一が手掛けていると思うが、そのクオリティーの高さに目を奪われてしまう。16面の小型モニターが並び、その上に5つの中型モニターが設置されている。
中型モニターにはメンバー5人の名前や楽器などが、歌い演奏しているのにシンクロしてフィーチャーされる。小型の方には、PVをはじめ映像がランダムに流れる。児玉は解散前の事変の後半からスタッフに加わり、その後の林檎のソロでその手腕を拡大している。その流れを経ての、このライブだ。
再生後の曲も、演奏された。のフュージョンに寄ったアレンジの『選ばれざる国民』、そして『永遠の不在証明』だ。『修羅場』『スーパースター』といった、初期の曲も演奏してくれ、懐かしくもあるがそれ以上に曲が古びていないことへの喜びの方が勝る。
『能動的三分間』『電波通信』といった、アッパーでライブ映えする曲を続けたのは素晴らしかった。『閃光少女』はイントロとアウトロが伊澤のキーボードという、新たなアレンジだった。序盤の『群青日和』と後半の『FOUL』では、中盤で刃田を除く4人がステージ前方に踊り出て横一列に並び、おのおのがソロを披露。特に後者では、3人のソロを林檎がフラグを振って応援するかのようなショットになっていた。
『透明人間』を経て、ラストは『空が鳴っている』。ステージ上にスモークが炊かれる中、林檎は歌い終えるとステージを後にし、残った4人による演奏が続く。やがてスモークはステージ上を覆い尽くして何も見えなくなり、演奏がSEにシフトしたところで、スモークがはれて無人のステージがお目見えした。「ウルトラC」のラストと同じ演出だ。
この後客電がついて、ライブが終了したことがアナウンスされた。つまりアンコールなしで、戸惑う観客は拍手をするが、再度終了のアナウンスがされた。ワタシは、スモークの演出をした時点でここで終わるなと思ったので、意外とは思わなかった。MCも全くなかったが、これが今回事変側が練りに練った上で放ったスタイルなのだ。
セットリスト
新しい文明開化
群青日和
某都民
選ばれざる国民
復讐
永遠の不在証明
絶体絶命
修羅場
能動的三分間
電波通信
スーパースター
乗り気
閃光少女
キラーチューン
今夜はから騒ぎ
OSCA
FOUL
勝ち戦
透明人間
空が鳴っている
8年前に東京事変が解散し椎名林檎がソロへとシフトしたとき、今日のような日が来るとは全く考えていなかった。この間に椎名林檎のライブは何度か観ていたので、正直なところあまり待たされた感も抱かなかった。がしかし、オープニングで幕が開いたその瞬間、鳥肌が立った。やはり、この5人が同じステージに立つというのは、すごいことなのだ。
特に感慨深かったのは、伊澤と亀田だった。8年前のラストライブ武道館、オーラス直前の伊澤のMCがとても印象的だった。音楽はずっと続くから、という伊澤のことばがいつしか伏線に転じていて、それがこの日回収されたのだ。亀田については、林檎のデビューから保護者のように彼女をバックアップしてきたが、事変解散後は共演する機会はほぼなかったように思われる。それが、この日林檎の隣でベースを弾く亀田の姿を見て、やっぱりしっくり来ると思ったのだ。
東京事変、ここに「再生」。
後は、この日参加されたみなさんが、数日後、数週間後、そしてその先も、無事で、幸せでありますように。
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