ロスト・イン・ラ・マンチャ(2002年)
はじめに書いてしまうと、本作は『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』を映画化しようとして「最初に」頓挫した一連のいきさつを捉えたドキュメンタリーだ。
当初はハリウッド映画として製作しようとしたが叶わず、ヨーロッパで資金集めをする。スペインの田舎で撮影を開始するが、その初日に近辺にあるNATO基地の軍事演習から発せられる騒音によって、録音が困難になる。2日目、突如大雨と洪水が発生し、機材が流されたり破損したりする。よって砂漠や崖の色合いが変わってしまい、前日の撮影分とつじつまが合わなくなってしまう。
極めつけは、ドン・キホーテ役のジャン・ロシュフォールが腰痛で馬に乗れなくなってしまったことだ。フランス人のジャンは7ヶ月かけて英語を習得し役作りをしていた。当初は本人も無理してでも臨む姿勢を見せていたが、結局断念。パリに戻って治療に入るが、椎間板ヘルニアで全治数ヵ月と診断された。撮影は中断・中止となり、製作スタッフは保険会社との交渉に入る。結果、保険金を受け取ることはできたが、脚本の所有権は保険会社に渡ってしまった。
撮影時期は、2000年9月から10月頃。この当時、ドン・キホーテがサンチョと勘違いする青年トビーの役は、ジョニー・デップ。この人にとっては、時期的に『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズに入る少し前というタイミングになる。このときのパートナーだったヴァネッサ・パラディの姿も、ちょこっとだが確認できる。
現在79歳のテリー・ギリアムは、この撮影時は60歳ということになる。十分大御所と言っていい年齢のはずだが、現在のヒゲをたくわえたごつい風貌からすると、このときのギリアムはまだまだ若々しい。
撮影用の各種セットは、完成した作品を知った上で見ていると手作り感に溢れ過ぎていて、(狙ったのかもしれないが)かなりチープだ。結果論だが、これについては企画が延びてかえってよかったのではと思ってしまう。
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