U2『Popmart:Live From Mexico City』
u2が、97年に行ったライヴのDVDを観た。同年リリースのアルバム『Pop』に伴うツアーから、その年の12月にメキシコで行われたもので、野外スタジアムに7万人もの観客が集まったとのこと。
まずは、当時史上最大規模だったステージセットに圧倒される。前回のZoo TVツアーでの大小モニターを並べたステージにも度肝を抜かれたが、今回は横長のスクリーンにマクドナルドを思わせる巨大な黄色のアーチが鎮座している。まず、入場から圧巻だ。ステージ袖からではなく、なんと客席の間の通路を歩いて登場するのだ。ボノは黒いコートをまとい、フードを取ると赤がかった短髪の風貌。筋肉のボディースーツを着ている。アダムがヘルメットにマスクと、まるでちょっとやばい系の人のような格好だ。
演奏は、当時の新作『Pop』からが中心となる。『Achtung Baby』から始まったサイバー路線の完結編でもあるが、全曲がテクノというわけでもなく、以前のU2らしさを匂わせる曲もあって、以前の曲との並びにも違和感を感じさせない。『Pride』『I Still Haven't Found What I'm Looking For』といったキラーチューンが前半に演奏されているのも、このツアーの特徴のひとつだ。中盤ではボノとジ・エッジ2人によるアコースティックセットが花道の先で披露され、『Desire』『Staring At The Sun』が切々と歌われる。この後はジ・エッジひとりでの『Sunday Bloody Sunday』の弾き語りバージョンとなった。
このライヴの最大の見せ場は、やはりアンコールだ。銀ギラの巨大なレモンが花道の先にゆっくりと移動し、静止したと思ったらぱかっと開いて、中にはメンバー4人が腕を組んで仁王立ちしている。そしてひとりずつゆっくりとレモンを降りて持ち場につき、最後にボノが『Discoteque』を歌いながらゆっくりと降りて、バンドに加わるという流れだ。終盤大詰めの『One』では、自殺したイン・エクセスのマイケル・ハッチェンスに追悼の意を捧げるコメントがあった。『New Year's Day』や『With Or Without You』のときには、ボノの指示でステージの照明が消され、オーディエンスが掲げるライターの火による光で彩られた。
以上が本編で、ここまではVHS版と同じ内容。DVDにはボーナスディスクがあって、こちらも見ものだ。旧ユーゴスラビアのサラエボで公演を行ったときの様子や、オランダのロッテルダム公演のダイジェストシーンなど、引き続きライヴシーンを観ることができる。ステージセットの構築を紹介するツアードキュメンタリーでは、デビュー以来現在もマネージャーを務めるポール・マッギネスがナビゲーターを担っている。U2関連の本を読めば必ず名前が出てくる人だが、結構ゴツい感じのの人だった。
このツアーでは98年3月に来日している。確か東京1回大阪1回という限られた公演で、ワタシは東京ドームに観に行っている。薄れそうな当時の記憶と自分が覚えたであろう感動が、こうした媒体に触れることで改めてよみがえってくる。
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