U2『Under A Blood Red Sky(Deluxe Edition)』
u2初のライヴアルバムとライヴ映像が、デラックスエディションとして1つのアイテムになって限定盤としてリリースされたことがあった(それぞれ単品でも発売されている)。
まずはCD。こちらは従来盤と内容は同じで、リマスター処理がされている。83年のツアーから、デンバー、ボストン、西ドイツの3か所の音源で構成されている。『WAR』で最初のピークを迎えたバンドのツアーを記録し、現在の大御所としての風格漂う佇まいとは違う、若さと疾走感に溢れたバンドの音が確認できる。
CD盤は物量としては物足りないが、それを補ってくれるのがDVDだ。VHS盤の13曲に4曲が追加された、言わば完全版。83年6月にコロラド州デンバーにある野外会場「レッドロックス」で行われたライヴを収録したもので、雨が降るあいにくの天候にもかかわらず、バンドの熱のこもった演奏がオーディエンスを刺激する。時期的には『War』リリース直後に当たり、そしてこの半年後には初来日公演を行っている。メンバーは年齢的には20代前半に当たるのだが、4人とも若々しく、特にジ・エッジとアダムは現在とはかなり風貌が変わっている。
映像はデンバーの街の景観から始まり、やがてレッドロックスでのライヴのための設営風景になる。雨が降りしきっていて、スタッフが暖を取りながら準備を進める。客席が日比谷野音のように扇形に伸びていて、もちろん超満員。U2の横断幕を掲げるファンもいる。メンバーが登場すると前方にファンが押し寄せ、そしてスタートとなる。
開演中は雨はやんでいたように見えたが気温は結構下がっていたとみえ、4人の吐く息は白い。それでもボノは溢れるエネルギーを抑え切れず、終始ステージ上を動き回りながら熱唱し、前に詰めているオーディエンスとタッチを交わし、また時には身を預けたりもする。『Sunday Bloody Sunday』ではボノは白旗を掲げ(恐らくこの時期の定番パフォーマンスだったのでは)、『New Year's Day』ではイントロでジ・エッジが淡々とキーボードを弾いた後にギターを唸らせる。この時期はまだ音作りがシンプルでストレートであり、エッジのギターがかなり印象的で耳に焼きつく。
アンコールの『11 O'clock Tick Tock』では、ボノが客席から女性ファンを引き上げ、ステージ上で踊る。女性ファンをステージに上げる行為は、スタイルを変えつつも、いつの時期でも行われているようだ。オーラスは『40』で、最後はメンバーがひとりずつ退場。2006年のヴァーティゴツアーもオーラスがこの曲で、ひとりずつ退場するというスタイルも同じだ。
DVD化にあたり、追加された4曲は主に序盤。VHS盤は『Surrender』で始まっているのだが、今回のDVDは『Out Of Control』で始まり、『Surrender』は4曲目だ。VHS盤を観ていない人であれば、特に違和感なく自然に入り込めるはずだ。
パッケージは外箱に包まれ、中を出すと(きつすぎて取り出すのひひと苦労)左開きのブック状になり、表紙側にCD、裏表紙側にDVDが収まっている。表記こそ英語でよくわからないが、ライヴの写真が盛り込まれていて、これを眺めるだけでも結構楽しめる。日本語盤のブックレットが、原文訳の掲載のみで独自の解説がなかったのが残念だ。
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