U2『Rattle And Hum/魂の叫び』(映画・1988年)
u2の『The Joshua Tree』に伴うアメリカツアーを追ったドキュメンタリー映画だ。「Rattle And Hum」は、直訳すると「ガラガラ、ブンブン」となるのだが、日本公開にあたって「魂の叫び」という「らしい」邦題がつけられている。
ビートルズの『Helter Skelter』をカヴァーし、B.B.キングとも共演を果たし、エルヴィス・プレスリーの墓を訪れ、と、ツアーはバンドにとってのルーツ巡礼の旅でもあり、そしてまたバンドが偉大なる先人たちの魂の正しき継承者として位置づけられていく過程であるようにも見える。圧巻は、終盤の『Where The Streets Have No Name/約束の地』のとき。映画はここまでモノクロなのだが、この曲のイントロからカラーに転じるというやり方は劇的だし、観ていてはっとさせられる。
同名のアルバムもリリースされているが、収録曲は映画と微妙に異なる。曲数としてはアルバムが17曲、映画が22曲。どちらか一方にしか収録されていない曲もある。
劇場公開時は、エルヴィスやビートルズを引っ張ってきて、彼らに自分たちを並べるのは傲慢だという批判もあったらしい。しかし、ラリーがエルヴィス宅を訪れるときに切々と語る場面や、教会で『I Still Haven't Found What I'm Looking For/終わりなき旅』を聖歌隊とコラボレートする場面など、彼らの音楽に賭ける真摯で謙虚なあり方は随所ににじみ出ている。
その後バンドはサイバー路線など音楽的な冒険を試みた時期もあったが、こんにちに至るまで基本的な立ち位置は変わっていない。だからこそ多くの若きバンドにリスペクトされ、先人たちからも一目置かれる存在になっているのだと思う。
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