頭脳警察@Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
今年結成50年を迎えた頭脳警察だが、さる9月18日に新譜『乱破』をリリース。そのリリースパーティー、およびリクエストの二部構成ライブが行われた。
ほぼ定刻に客電が落ちると、メンバーがすぐさま登場。オープニングは新譜『乱破』のトップでもある『乱破者』なのだが、アルバムと同様尺八のイントロが。ステージ向かって右に尺八奏者が現れて吹いていた。さすがにライブではSEにするかなと思っていたので、ここでまず意表を突かれた。
そしてバンド演奏となるのだが、最初の一音がビシッと決まり、この瞬間鳥肌が立った。そして、この日のライブが素晴らしいものになることが、ここで約束された。頭脳警察のライブが緩い雰囲気になることなどありえないが、まるでナイフのように切れ味鋭いリフに、結成50年を経てもなお前のめりに進まんとする姿勢を感じた。
ステージは、前方向かって左にpanta。今回は、椅子に腰掛けながらギターを弾いている。その隣が、パーカッションの石塚俊明。2人とも、サングラスをかけている。この日のバンドは3人。後方中央は、ドラムの樋口素之助。向かって右はギターの澤竜次、左はベースの宮田岳で、この2人は現在活動休止中の黒猫チェルシーの面々だ。
続く『ダダリオを探せ』では、澤がイントロをかき鳴らしながら前の方に躍り出て始まった。バックの3人、いずれも上手い。そして、個人的にこの日はじめて入ったマウントレーニアホールは、音がすこぶるいい。ワタシは向かって右側の席だったが、反対側のベースの音もよく聴き取ることができた。
そして、PANTAのギターによるイントロのリフ。『夜明まで離さない』で、場内はざわつき、その後沸き立つ。第一部は新譜『乱破』を曲順通りに演奏するものと思っていたが、そこまで固定されたセットではないことがここで判明する。
澤はビブラートを駆使した典型的なギタープレイで、音も仕草もかなり目立ち、PANTAがしないであろうプレイを担っている。スーツ姿の宮田は派手さこそないが、それでもベーシストとしては目立つ方だと思う。ドラム樋口は、超絶プレイだけでなく客席から見ても表情豊かで、自身もライブを楽しんでいるさまが伺える。
恐らくは息子くらい年の離れた若手たちを従えた、石塚そしてPANTA。石塚はパーカッションのほかタンバリンなども操り、相変わらず冴えている。スリムな体型にほぼスキンヘッドにサングラスといういでたちは、ちょい悪オヤジ(死語?)のよう。一方のPANTAは、長髪は白髪になり、体型も以前よりはかなりがっしりしている。もちろん全曲でリードヴォーカルだが、ギターは完全に澤にリードを委ねているわけでもなく、時には自らもかき鳴らす。
『R★E★D』からの『戦士のバラード』で第一部が終了。結成50年にして新譜を産み出せること自体が奇跡的だが、『乱破』はハードとソフトの頭脳警察の両極の持ち味を兼ね備えつつ、『不連続線』や『暗転』にも見られるような和の文学性が注入されている。しかし、集大成や総決算という終末感はなく、これからも永劫にバンドは続いていくんだという決意を思わせてくれる。実はアルバム終盤には既発曲の再レコーディングが収められているのだが、『夜明まで離さない』『R★E★D』もそこに含まれているので、合点がいった。
約20分のインターバルを経て、リクエストトップ10を披露する第二部へ。最初が『詩人の末路』だったが、この曲は次点つまり11位とのこと。以降、数曲ずつ区切って演奏され、合間にPANTAが解説を入れる。このアイディアは、山下久美子のライブから拝借したそうだ。
10位『落ち葉のささやき』
9位『光り輝く少女』
共にソフト路線で、一見頭脳警察のイメージとはかけ離れているが、個人的に『落ち葉』は名曲だ。2002年に「命どぅ宝 平和世コンサート」で佐渡山豊、遠藤ミチロウと共に歌い演奏した姿は、ボブ・ディラン30周年コンサートでの『My Back Pages』で、ジョージ・ハリスンやニール・ヤングなどが歌いつないだのを経てディランが歌ったときのビジュアルを思い起こさせた。とはいえ、トップ10に入ってきたのは意外。そして、嬉しい。
8位『赤軍兵士の詩』
7位『さようなら世界夫人』
『世界夫人』はともかく、『赤軍兵士』が入ってくるとは。出だしでPANTAは何語かわからない言語で語っていたが、演奏後の解説でロシア語とわかった。
6位『戦慄のプレリュード』
5位『飛翔』
4位『銃を取れ!』
アッパーな曲が3曲連続で。『戦慄』の風雲急を告げるかのようなイントロ、『飛翔』の哀感漂うメロディに唸らされ、そして『銃を取れ!』ではついに場内が沸点に達し、1階席の客は次々に立ち上がった。頭脳警察のイメージを体現してきた曲に、かなり年齢層高めの観客も黙ってはいられなかったのだ。
3位『Blood Blood Blood』
個人的に、この曲における好きなポイントはPANTAによる怒りの混じった歌詞よりも、石塚による魔法のようなパーカッションプレイだ。パーカッショニスト自体日本では希少と思われるが、この人のプレイは唯一無二だ。演奏が終わった後、PANTAは声をからし、誰だこの曲をリクエストしたのは?と冗談気味に毒づく。そして、「この曲をリクエストした奴は殺人許可証を持っていた」とも。にやにや。
2位『ふざけるんじゃねえよ』
『銃を取れ!』以降、場内のヴォルテージはあがりっぱなしだったが、ここがピークだったかも。この曲も定番で、この順位も納得だ。
1位『万物流転』
PANTAは、この曲が1位に選ばれて嬉しいと言っていた。イントロを自らアコギで弾き始め、ドラムのリフが続き、PANTAが歌い始める。後半、PANTAはサビを客に歌わせるが、合唱率高し。年期の入ったファンが集結したと思われ、さすがだ。この曲は90年再結成時のテーマだったが、21世紀以降の頭脳警察のテーマにもなっているのではないだろうか。
アンコールの『コミック雑誌なんかいらない』では、オープニングに続いて尺八奏者が加わった。PANTAの紹介により、『乱破』に参加していた石垣秀基とわかる。中盤から後半はフリーセッションになり、まず澤と石垣が石塚のところに寄ってプレイ。すると、宮田も石塚のところに寄ってきて、更にはPANTAが宮田の隣に寄ってギターを弾くという、石塚近辺だけ人口密度が異様に高くなった(笑)。
頭脳警察は個人的に大好きなバンドのはずだったが、前回ライブを観たのは2008年日比谷野音のJAPAN ROCK FESTIVALで、なんと11年も空いてしまっていた。もちろん、その間もバンドは活動していたので、足を運ばなかった自分を恥じた。
結成50年に際し、ドキュメンタリー映画の撮影が続けられているそうだ。この日の公演も撮影され、それは来年2月のPANTAと石塚の誕生日まで続けられるとのこと(2人の誕生日は3日しか違わない)。こちらの公開も楽しみだが、頭脳警察が存続し今後も活動が続くことが楽しみだ。
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