「ボヘミアン・ラプソディ」を観た(ネタバレあり)
空港で働くフレディは、詞を書きながら夜はライヴハウス通いをしていた。ブライアン・メイとロジャー・テイラーが組んでいたバンドにヴォーカリストとして加わり、脱退したベーシストの後任にジョン・ディーコンが加入。バンド名を「クイーン」に改めて、活動を開始する。
マネージメントがつき、レコード会社とも契約し、アルバムが売れ、ツアーを敢行。クイーンは、徐々にスターダムの階段をかけ上っていく。フレディは、プライベートでもライヴハウスで知り合ったメアリーと付き合いやがて婚約するが、海外ツアー中に自身の別のセクシャルな面に気づきはじめる。
英国のロックバンド、クイーンの、というよりフレディ・マーキュリーの伝記映画だ。欧米はもとより、ここ日本でも爆発的ヒットを記録。公開開始から1ヶ月を経てもなお客足は伸び、もはや社会現象になりつつある。テレビでも、特集や関連番組が放送されるようになった。
まず、映画の内容として、事実とは異なる描かれ方がいくつかある。フレディがバンドメンバーに自身がエイズに冒されていることを明かしたタイミングも異なるし、恋愛関係は男女入り乱れていて、その数は数10人にのぼるとも言われている。
また、80年代前半にフレディがほか3人と対立しソロアルバム制作に走った風になっているが、実際はブライアン・メイもロジャー・テイラーもソロアルバムを作っている。ライヴエイド出演の直前は何年もライヴをしていないとされていたが、実際は84年から85年にワールドツアーをおこなっていて、ライヴエイドの2ヶ月前には来日公演も敢行している。
こうした書き換え、あるいは描かないことによる観る側への誘導を気にするか、それとも受け入れて楽しむか。ワタシは、観終わった直後はちょっと気になったが、時間が経つにつれ、あれはあれでアリなのだと思うようになった。なぜなら、ドキュメンタリーではなく伝記映画であり、ブライアン・メイもロジャー・テイラーもこの映画を容認しているからだ。
キャストは、クイーンの4人にはそれぞれ似た俳優が起用されている。最も似ていたのはジョン・ディーコン役の人、次いでブライアン・メイ役の人。ロジャー・テイラー役の人はとにかく美形で、きっとベイ・シティ・ローラーズの役もできる(笑)。というわけで、フレディを演じたラミ・マレックは、見た目だけならさほど似てはいない。背も少し足りない。
のだが、この人の入魂の演技には、まるでフレディが憑依したのではないかと思わせる瞬間がいくつもある。その最たるが、クライマックスとなったライヴエイドのステージだ。まずステージセットからほぼ完全再現され、ピアノの前に座ったフレディはいきなり代表曲『Bohemian Rhapsody』を切々と歌う。続いては85年当時のヒット『Radio Ga Ga』となり、場内の一体感が素晴らしい。そしてこのライヴを牽引していたのは、フレディ/ラミだ。
フレディとは別れるも友人関係を続けていたメアリー、そして死までのパートナーと言われるジム・ハットンがステージ袖でフレディのパフォーマンスを見守っている図式もいいし、演奏中に募金の電話が鳴り止まないさまも、会場とは別の臨場感を放っている。
キャストに話を戻すと、ボブ・ゲルドフ役の人も似ていた。そして、エンドロールではフレディ/ラミ・マレックの次にクレジットされていたのが、メアリーを演じたルーシー・ボイントンだ。この人、去年観た「オリエント急行殺人事件」に伯爵夫人役で出演していた。そこでの出番はわずかだったが、今回は、関係性を変えつつもフレディを支え続ける役どころを演じている。更に調べると、「ミス・ポター」で主人公ビアトリクス・ポターの少女時代を演じていた人だった。
ライヴエイドのステージでクイーンと入れ替わりにステージを降りるバンドが、ちょっとだけ確認できる。事実に沿っていれば、彼らはダイアー・ストレイツだったことになる。また、アダム・ランバートがカメオ出演しているという情報は事前に知っていて、観ながら一生懸命探したが、結局わからなかった。後で検索してわかったが、あいつだったのか。
今回、個人的にはじめて応援上映を体験。がしかし、ぶっちゃけさほどでもなかった。この作品は、音楽が鳴っている時間よりも鳴っていない時間の方が長いこともあったと思う。レコーディングやライヴのシーンで拍手したり歌詞を口ずさんだり、という程度だったかな。
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