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椎名林檎@さいたまスーパーアリーナ(生)林檎博’18ー不惑の余裕ー 2018年11月24日

公開日: : 最終更新日:2024/04/09 ライヴ ,

椎名林檎@さいたまスーパーアリーナ(生)林檎博'18ー不惑の余裕ー 2018年11月24日

いまだかつて、のライヴでこれほどまでにサプライズが起こりまくったことがあっただろうか。何から書けばいいやらだが、とりあえず時系列に沿って書くことにする。

定刻を10分ほど過ぎたところで客電が落ち、ステージ直下に陣取ったオーケストラが演奏を始める。指揮の斎藤ネコが、途中手旗を振ってそれとなく観客をアゲる。ステージバックドロップからレーザー光線が飛び交い、スクリーンには巨大な宇宙船のシルエットを思わせる光のラインが確認できる。バンド演奏が加わり、大きくデジタルに寄ったアレンジは『本能』のイントロだ。そしてステージ正面後方から、ライムスターのMummy-Dが登場。つまり、トリビュートアルバム『アダムとイヴの林檎』のバージョンだ。

タキシード姿のMummy-Dは自身のMC部を歌い、中盤になると椎名林檎の生声が。林檎は、ステージ後方ひな壇のガラスで覆われたボックスに陣取っていて、ワンコーラス歌ったところでガラスを割って前方に登場。つまり、『本能』PVに掛かっている(白衣のスタッフがガラスを片付けていた)。そして、2人並んでのデュエットに。続くは、やはりMummy-Dが参加している『流行』。出だしから、この豪華さは何なのだ。

春のツアー「真空地帯」は会場がホールクラスだったが、今回の林檎博はアリーナクラスで、ステージセットや演出も当然ながら2万人規模の客を満足させんとする仕様になっている。バックドロップの6面のスクリーンにはデジタル調の映像が洪水のように流れ、その迫力に圧倒される。また、6人の女性ダンサーが彩りを添えていて、その中心はBAMBIとAIの2人だ(4年前はAYAとBAMBIの2人だったが、現在はコンビ解消しているらしい)。

バンドメンバーは、春ツアーから変わっていない。ドラムみどりん、ベース鳥越、ギター名越、キーボードはヒイズミ。鳥越はブルーの、名越は紫の、ヒイズミは黄緑のスーツを着ていて、ライトの当たり具合もよく、遠目でも映えているように見えた。オーケストラピットに陣取るは、4年前の林檎博と同じく斎藤ネコ率いる「銀河帝国楽団」だ。春ツアーに帯同していたホーンセクションのトリオも、この中にいるようだ。このような大所帯を率いる林檎は、大きな王冠を被り、堂々たる佇まいだ。

中盤の『カーネーション』『ありきたりな女』といった抑え目の曲では、オーケストラが一層映える。遠目にも目立つハープだが、ぽろろんという優しい音色が心地いい。一転して『歌舞伎町の女王』ではバックが歌舞伎町のネオンになり、よく見ると彼女に関わるワードやCDシングルのジャケットなどが看板風になっているのが確認できる。『人生は夢だらけ』では、終盤の林檎の歌い上げが素晴らしく、聴き惚れてしまう。

衣装替えのため林檎が捌けていき、曲は『東京は夜の七時』に。と、ステージに登場したのはスーツ姿の浮雲だ。時代からヴォーカルを任されることもあった人だが、ゲスト枠とは出世した(笑)。いい意味でのヘラヘラさは相変わらずで、演奏している鳥越にマイクを向けてワンフレーズ歌わせていた。続く『長く短い祭』では、林檎と並びデュエットに。

前半ではフィンガー5のカヴァーを演っていたが、後半ではなぜか80年代はじめに放送していたアニメ『さすがの猿飛』の主題歌『恋の呪文はスキトキメキトキス』を。ワンコーラスだけだったけど、でもどういうチョイス?!

『目抜き通り』はトータス松本とのデュエットだが、トータス本人の姿はなく、映像で代用されていた。と、この後ステージが暗転し、アリーナ前方からはどよめきが。再びステージが明るくなったとき、林檎の隣には宮本浩次がいた!え!?まさか!?トータスが今回のツアーで何度かゲスト出演していることは聞き知っていたが、宮本は初だ。

曲は、リリースされたばかりの『獣ゆく細道』。メロディーはもろ林檎節、ヴォーカルは林檎のシャープな声と宮本の魂を絞り出すような声がシンクロする。そして、ここでの注目は宮本のパフォーマンスだ。先日のMステでの暴れっぷりも記憶に新しいが、今回は更に激しさを増している。6人のダンサーが林檎を囲むように踊るのだが、本来囲まれる側のはずの宮本は、なぜかダンサーの方に寄っている(笑)。宮本が加わったことのサプライズ感は、いつのまにか宮本のエキセントリックな動きへの笑いに転じていた。林檎も、さすがに笑っていた。

NHK『ためしてガッテン』のテーマ曲『ジユーダム』で本編を締め、結構間があってからアンコールに。林檎は着物姿になっていて、ハンドバッグで顔を隠しながらマイクスタンドまで足を進めてきた。ここで、再び宮本を呼び出す。宮本は林檎デビュー20周年を称え、林檎はエレカシ30周年を称えた。エレカシは、斎藤ネコとも共演歴があるとのこと。そして、エレカシの『昔の侍』が披露された。

更にだ。テレビゲーム風の映像と「BONUS TIME」という文字が流れる中、今度はレキシが登場!曲はもちろん『きらきら武士』だが、本来林檎とのデュエットのはずが、レキシは林檎パートを含めほぼまるまる自分で歌っていた。オーケストラピットを覆うようにステージから花道が伸びていて、林檎は向かって左から、レキシは向かって右から足を進めて歌った。歌い終わったときに2人は花道の中央に立ち、その場で少しMCを。レキシは宮本の後はキツいと言い、林檎は追い討ちをかけるように、宮本にもレキシネームつけたらと言っていた。

オーラスは『夢のあと』で、メンバーが捌けた後のエンディングが『丸の内サディスティック』のブレイクビーツのようなバージョン。サングラス姿の林檎やダンサーたちが踊るさまが、スクリーンに映し出されていた。

セットリスト
本能(with Mummy-D)
流行(with Mummy-D)
雨傘
日和姫
APPLE
MA CHERIE
積木遊び
個人授業(フィンガー5カヴァー)
どん底まで
神様、仏様
化粧直し(インスト)
カーネーション
ありきたりな女
いろはにほへと
歌舞伎町の女王
人生は夢だらけ
東京は夜の七時(浮雲)
長く短い祭(with 浮雲)

恋の呪文はスキトキメキトキス(アニメ『さすがの猿飛』主題歌)
ちちんぷいぷい
目抜き通り
獣ゆく細道(with 宮本浩次)
ジユーダム

アンコール
昔の侍(with 宮本浩次)
キラキラ武士(with レキシ)
夢のあと
-ED BGM-
丸の内サディスティック neetskills remix

多彩なゲストには、ただただ驚かされるばかりだった。後で調べたが、各ゲストは必ずしも固定で登場すると決まってはいないらしく、日によってばらつきがあったようだ。宮本の登場は、最新シングルを思えばある意味当然だが、この日まで出演がなかったのでほんとうに驚いた。加えてレキシもだ。

彼らがゲストとしてステージに立ってくれるのも、椎名林檎の表現者としての力量、そして音楽に賭けるひたむきな姿勢があるからだと思う。彼らは彼女をリスペクトしているはずだし、それはこの日会場に集まったワタシたちファンも同じ気持ちだ。

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