アントマン&ワスプ(ネタバレあり)
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最終更新日:2023/02/13
アントマン マイケル・ダグラス, マーベル, ミシェル・ファイファー, ローレンス・フィッシュバーン
二手に分裂したアベンジャーズのキャプテン・アメリカ側についた、アントマンことスコット。逮捕・投獄されたが、司法取引で解放された代わりに自宅軟禁でFBIの監視下に。今は別れた妻と暮らす娘や、かつての泥棒仲間で今は警備会社を経営するルイスと交流しつつ、監視から解放される日を待っていた。一方ハンクとホープは、スコットの煽りを食ってFBIに追われる身となっていた。
量子の世界に入る夢を見たスコットは、ハンクに連絡。するとホープに連れ出され、夢のことを詳しく話させられる。30年前に量子の世界に行ったきりになっていた、ハンクの妻ジャネットの救出を2人は試みていて、スコットはその協力をすることに。しかし、量子トンネルに必要な部品の闇取引中に白いスーツの「ゴースト」が現れ、部品を奪われてしまう。ゴーストことエイヴァは、両親を量子実験の事故で失い、自身の実体が不安定になっていた。
『アントマン』単体としては2作目、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)では20作目にあたる。時間軸では『シビル・ウォー』の後にあたる。
今回、ほんとうの意味での敵はちょっと見当たらない。部品の闇取引相手で量子トンネルを新たなビジネスと考えて狙ってくるバーチ、自身の実体を安定させたいエイヴァとの三つ巴のように一見見えるが、バーチ一味ははっきり言えばたいしたことはないし、エイヴァも敵というよりはむしろ実験の被害者のようなものだ。
今作のテーマは、勧善懲悪ではなく「家族」だと思う。前作では泥棒で刑務所暮らししていたスコットは、妻と離婚され娘も引き取られるダメ夫ダメ父だった(アントマンとしての活躍で、元妻もその再婚相手の警官もスコットを認める)。しかし娘は変わらずスコットになつき、いつも彼の味方をするのは、今作も同じだ。また、前作では仲違いしていたホープとハンクも和解し、妻であり母であるジャネットを救うという、共通の目的に立ち向かう。両親を失ったエイヴァをサポートしているビルは、シールド時代のハンクの同僚だが、エイヴァの保護者にも見える。
タイトルは『アントマン&ワスプ』で、観る前は当然スコットとホープのペアのことを指していると思っていた。しかし、初代アントマン&ワスプのハンクとジャネットの夫婦ペアも含んでいるのだと、見終わった後は思っている。もっと言えば、ハンクとホープの父娘ペア、量子の世界を説明するためにジャネットが精神波を送ったのはハンクでもホープでもなくスコットで、量子の世界を知るという共通項がある。
今作は、MCU中最もコミカルな作品とも言える。FBI捜査官とスコットとのマジックをめぐるやりとりや、バーチの部下とルイスで投与するのが自白剤か否かで言い合いになっていたり、投与された後の自白がやたらと細かくさかのぼりすぎていたり、と、笑える場面がいくつもある。予告編でも流れていた、カーチェイスの中でキティちゃんのペッツが巨大化するシーンは、本来緊張感ある場面のはずなのに、やっぱり笑ってしまう。
体を小さくしたり巨大化させたりという、ほかのMCUヒーローにはない特性で、日常の空間がスリリングに見えたり、あるいはシュールに見えたりする。それを実現する理論的裏付けとして量子力学があり、量子空間という異次元の世界を体感できる素晴らしさもある。よくできている。
スコットのポール・ラッド、ハンクのマイケル・ダグラス、ホープのエヴァンジェリン・リリーは、もちろん前作から続投。エヴァンジェリン・リリーはこのシリーズ以外で観たことないと思っていたら、『ホビット』シリーズのタウリエルだった。おお。ビルはローレンス・フィッシュバーン、エイヴァはハナ・ジョン=カーメンという人。そしてジャネットは、ミシェル・ファイファー。彼女がこういう形でMCUに加わってくれたのが、なんだか嬉しい。
終始順調かと思いきや、エンドロール時に『インフィニティ・ウォー』と同期してしまう。無関係でいられるはずはないと思ってはいたが、そうかあそうなっちゃったかあ。しかし、この窮地を救うのがキャプテン・マーベルだけでなく、アントマンもその一端を担う可能性が出てきて、少しは希望が持てると思っている。
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