ボブ・ディラン『30周年記念コンサート(DVD)』
1992年10月、ボブ・ディランの30周年記念コンサートがニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで開催された。ディランと共演経験のある、ディランをリスペクトする、ディランに影響を受けた、などのアーティストが多数集結し、ディランの曲を歌い演奏。映像はVHSパッケージでリリースされたが、権利関係ですぐさま廃盤に。それが、2014年になってDVDとしてリリースされた。
しかし、やはり権利関係なのか、全てのアーティストの演奏は収録されていない。何人かはカットされ、複数曲歌った人も1曲のみにされるなどの処理がされている。ただ、VHSのときにはカットされたシニード・オコーナーは、今回のDVDには収録されている。シニードがステージに立つと場内からはブーイングが起こり、彼女は予定していたディランの曲ではなく、ボブ・マーリーの『War』をアカペラで歌った。
シニードは公演の少し前に「サタデー・ナイト・ライブ」に出演。『War』をアカペラで歌うと、ローマ法王の写真をテレビカメラに向かって破り捨てた。それは自身の少女期の辛い体験と閉鎖的なローマ・カトリックの体質に対する抗議だったが、視聴者からは反発を買った。その余波だったのだ。ワタシは1992年年末にBSで放送されたのを観ていて、シニードの場面も観た。商品化に伴いカットされたのは大人の対応だなと思いつつ、DVDで復活したことの方にむしろ驚いている。
さてコンサート本編だが、終盤、エリック・クラプトン、ザ・バンド、ジョージ・ハリスン、トム・ペティ&ハートブレイカーズ、ロジャー・マッギンと、大物かつディランに近い人が次々に登場し、緊張感が高まってくる。そして、ついにディランが登場し『It's Alright, Ma (I'm Only Bleeding)』を。この後は選ばれし大物たちとディランによる『My Back Pages』で、大物たちが歌いつなぐ度に場内からは歓声が起こった。全員での『Knockin' on Heaven's Door』はお祭りムードだが、締めくくりはディランひとりだけでの『Girl from the North Country』。お祭りで終わらせないのが、ディランらしい。
約40分の特典映像は、今回はじめて観た。リハーサル映像と出演者のインタビューだが、まあなんと豪華なことか。当時はまだ駆け出しのエディ・ヴェダーとマイク・マクレディ(パール・ジャム)は、ファンのように目を輝かせていた。ニール・ヤングがピアノを弾きながら歌った曲は、結局本番では歌われなかった。ルー・リードは、『The Bootleg Series』のことを目を輝かせながらインタビューで語っていた。ステージではそこからの『Foot Of Pride』を歌っていて、マニアックな選曲にディランを好き過ぎることの度合いの深さが伺えた。
ステージに立ったアーティストたちの中で、鬼籍に入ってしまった人は少なくない。ジョニー・キャッシュ、リッチー・ヘヴンス、ルー・リード、ジョージ・ハリスン、トム・ペティなど。ザ・バンドの中の何人か、そしてハウスバンドを務めたブッカー・T&MG'sの何人かもそうだろう。時の流れを感じる一方、ニール・ヤングやディランが未だに現役でいるのが誇らしくもある。
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