デンジャラス・デイズ メイキング・オブ・ブレードランナー(2007年)
公開時こそ興行的に目立った成果は得られなかったが、家庭用ビデオやケーブルテレビなどの普及にリンクしてその表現力が少しずつ浸透するようになり、こんにちでは傑作SFカルト映画として君臨している『ブレードランナー』。その製作の裏側が、2007年のファイナル・カット版リリースに伴って1本の映像作品にまとまっている。
『デンジャラス・デイズ』は、もともと制作着手時の最初のタイトルだった。しかし、監督リドリー・スコットらの判断によって別のタイトルを模索し、ウィリアム・バロウズの小説から引用したそうだ(「医療機器密売人」の隠語でもあるとのこと)。あの暗くて退廃的な町並みは、ほとんどがスタジオに作られたセットで、ロケはロサンゼルスで夜間にのみ行ったそうだ。
デッカードのハリソン・フォード、レイチェルのショーン・ヤング、レプリカントのルトガー・ハウアーやダリル・ハンナなど、主要キャストのインタビューももちろんある。現在の彼らはさすがに年を感じさせるが、ショーン・ヤングだけはスクリーンのイメージとあまり変わっていなかった。
インタビューは、それぞれの場面をピックアップしつつ、その撮影ウラ話を俳優たちが披露。ルトガー・ハウアーの最後のセリフはアドリブ、ハトを飛ばすのもハウアーのアイディア、しかしうまく飛ばずに結局別撮りになったとのこと(笑)。ダリル・ハンナは体操の経験があったので側転を取り入れた、彼女の代役は男性が務めていた。などだ。
画面に直接登場こそしなかったが、この映画を傑作たらしめているキーマンが、あとふたりいる。ひとりは、音楽を担当したヴァンゲリス。リドリー・スコットは何度もスタジオに足を運び、曲ができあがっていくさまを体感したそうだ。
もうひとりは、原作者のフィリップ・k・ディック。当初、自分を差し置いて制作が進んでいるのが面白くなく、ディックは映画化に批判的なスタンスを取っていた。しかし試写を観て、自分の頭の中を覗いたのかと賛辞したそうだ。映画は原作まんまではなく、カットした設定と付加した設定が、共に数多くある。そして、双方共に傑作に仕上がっている稀な例だ。
「2つで充分」のやりとりや強力わかもとの看板など、日本人ならはっとさせられ、かつハリウッド映画に日本の要素が組み込まれていることを光栄に思うのだが、このドキュメンタリーでは残念ながら全く触れられていなかった。
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