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ザ・ストゥージズ(The Stooges)のドキュメンタリー「ギミー・デンジャー(Gimme Danger)」を観た

ギミー・デンジャー(Gimme Danger)

に依頼し、なんと8年の歳月をかけて作られた、のドキュメンタリー映画「ギミー・デンジャー」。イギーによるインタビューを軸とし、当時の映像や写真を満載した、見応えのある作品に仕上がっている。

冒頭をストゥージズ狂乱のライヴパフォーマンスでブチかまし、続いて各メンバーの生い立ちまでさかのぼる。イギーは学生時代はドラマーで、大学をドロップアウトして本格的に音楽に打ち込むときにフロントマンに転じた。ロンとスコットのアシュトン兄弟は、ロンがハイスクール時代にお金を貯めて学校を休み、ザ・フーを観るためにに行った。彼らが出会い、アシュトン家で練習を積み、デイヴ・アレクサアンダーが加わってストゥージズになった。

商業的には成功せず、評価を勝ち取ることもなく、アルコールやドラッグにはまり、バンドは迷走。デイヴは解雇され、その後すい炎で1975年に20代の若さで亡くなった。ジェイムス・ウィリアムスンがギタリストとして加入し、ロンがベースに回って再起を図るも、結局バンドは1974年に空中分解する。ロンやスコットはそれぞれ別のバンドへ、イギーはソロへ、ジェイムスはプロデュース業を経て機械工学の道に進んだ。

ところが、解散した後になって風向きが変わってくる。やダムドといったパンク勢がストゥージズへのリスペクトを公言し、曲をカヴァーした。イギーがサタデー・ナイト・ライヴで『I Wanna Be Your Dog』を歌ったとき、バックを務めていたのはだった。映画「ヴェルヴェット・ゴールドマイン」でが演じていたシンガーは、イギーとカート・コバーンをミックスしたようなキャラクターだった。サントラには、ロンが参加していた。

そして、アシュトン兄弟が再び同じステージに。ミニットメンのマイク・ワットが、ベースを務めた。彼らを同じステージに立たせたのは、当時ソロ活動していたJ・マスキスだった。やがてイギーの耳にもこのことが届き、2003年コーチェラフェスでついにストゥージズが再編。サックスのスティーヴ・マッケイも、合流した。やがてロンは亡くなってしまうが、ここで今度はジェイムスが加入。ジェイムスは、なんとソニー技術部門の重役だったのだが、退職してストゥージズを選んだ。2010年にストゥージズはロックの殿堂入りを果たし、イギーは感動的なスピーチを述べた。プレゼンターは、のビリーだった。

ストゥージズのアルバムは聴いていたし、現時点での評価は認識していたつもりだった。ライヴも、2004年マジック・ロック・アウトと2007年で体験しちえた。しかし、何かが欠けていた。それは、60年代70年代のバンドと周囲の状況が、どれだけひどくそして残念だったかということだ。この映画では、どん底っぷりをさんざん見せつけられた後、次の世代が彼らのスピリットを受け継いでいることが少しずつ明らかになり、そして本家の復活につながっていく。これは、はっきり言ってずるい(笑)。

スコットは2014年に、スティーヴも2015年に、それぞれ亡くなっている。インタビューはイギーが大半で、次がスコット、そしてジェイムスだ。ロンのインタビューが少ないのは、2009年に亡くなっているからだと思う。この映像は、デイヴを加えた故人4人に捧げられている。

それにしても、J・マスキスがここで暗躍しているとは知らなかった。再編の功労者として、メンバーたちは揃ってJの名を挙げた。イギーも、オレの右に出るのはJ・マスキスくらいと言う。Jにとっては、最大級の賛辞だ。もっさりしていて口数が決して多いとは言えず、インタビューで5分以上沈黙するJは、人には好かれる性格かもしれないが、てきぱきと物事をこなしまとめあげる人には、到底思えなかった。

いや、忘れていたのだ。2001年のJのソロ来日公演を観たとき、ベースはマイク・ワットで、本編ラストはマイクがリードヴォーカルの『TV Eye』だった。また、Jのソロ2作目『Free So Free』国内盤には、『Alone』のライヴバージョンがボーナストラックとして収録されていて、ロン・アシュトンが参加していた。再編への準備は、このとき着々と進んでいたのだろう。またもっと言えば、Jがダイナソーを再結成させたのは、大先輩ストゥージズの再編もその一因だったのかもしれない。

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