ブラック・レイン(松田優作)
劇場用作品としては松田優作の遺作になった『ブラック・レイン』は、この人にとっては全てではなく、ハリウッドへのほんの名刺代わりの作品だったはずだ。癌に冒されていながらも撮影に臨んでいたが、本人は癌は治療できるものと思っていたらしい。それがここで途絶えてしまったのは、本人にとってどれだけ無念なことだったろう。
しかし、優作に関わった俳優たちは、その遺伝子を受け継いでいる。現在ハリウッドで活躍する日本人俳優は、優作が作った轍を歩んでいると、ワタシは見ている。『ブラック・レイン』を見直してみて、あれこの人が出ていたんだと思ったのが、國村準だ。今や味のあるベテラン俳優として活躍しているが、ココでは優作の部下役として、銃をとり走り回っていた。撮影の合間でも優作とは映画や演技の話ばかりしていたと、國村は語っていた。
今ではよく知られていることだが、ラストシーンは2パターン撮影されている。当初は、マイケル・ダグラス演じるニックと格闘の末、優作演じる佐藤は死ぬという設定だった。それが、優作のキャラクターが想定以上に光ったため、続編を作るべく(ハリウッドらしいな)生かすという案も上がり、2種類を撮影したとのこと。結果は後者が採用されたが、おクラ入りになったはずの前者は、優作の死後フライデーかフォーカスかに写真が掲載された。そのショットは今回のDVD特典映像でも紹介され、コメントされている。
ワタシは、音楽関連のDVDは数多く買って所有しているが、音楽に関連しない映画をDVDで買ったのは、現時点では『ブラック・レイン』だけだ。映画については、劇場で見るか、テレビで放送されたのを録画して観るかのどちらかにしている。おカネを出して入手し、棚に保存し所有しておきたいと思うのは、自分にとって特別な作品だからである。そして、この作品を特別たらしめているのは、やはり松田優作が命を賭けて臨んだ作品だからだ。
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