魚影の群れ(1983年)
公開日:
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邦画
青森の漁港、大間で漁師している房次郎は、ひとり娘のトキ子と暮らしていた。トキ子は、喫茶店で働く俊一と結婚したいと房次郎に話す。房次郎は俊一と会い、俊一は漁師になる意思があることを伝える。
店を畳んで漁港に来た俊一は、房次郎に漁を教えてほしいと頼み込む。はじめは無視していた房次郎だが、やがて自分の船に乗せて漁に出る。マグロを釣り上げるときに、糸が顔に絡まって血まみれになってしまった俊一は入院。そして1年後、俊一は自分の船と共に漁港に帰ってくる。
以前、テレビ東京の木曜夜に映画放送枠があったとき、ザッピングしていて、無線で房次郎がトキ子に話すラストのシーンだけをたまたま観た。以来ずっと気になっていて、やっと全編を観ることができた。
房次郎は緒形拳、トキ子は夏目雅子、俊一は佐藤浩市、房次郎の元妻アヤは十朱幸代。漁港の漁師仲間に、下川辰平や三遊亭圓楽。監督は相米慎二で、本作の前には『翔んだカップル』『セーラー服と機関銃』を監督していたことを思うと、作風のギャップに驚かされる。
緒形拳は、他の作品で観るイメージとあまり変わらない。佐藤浩市は、前半はリーゼント頭の若くて少し弱さを見せる青年だが、後半ではギラギラし野心に溢れた顔つきになっている。夏目雅子は、うーん、若くして時間が止まってしまっている事実を知った上で観ているので、出演シーンのすべてが貴重という見方をどうしてもしてしまう。
舞台は大間町と一部は北海道だが、オールロケで撮影されている。漁の迫力はすさまじく、もちろんCGなどではなく実写で、本物のマグロを用意したそうだ。撮影は、緒形拳や佐藤浩市の船に乗る班と、別の船で引きで撮る班がいたのではと想像している。夜の荒波やマグロとの格闘など、生々しく臨場感に溢れている。
夏目雅子は、本作公開の2年後には白血病からの肺炎で亡くなってしまう。27歳の若さだった。この人と同世代の女優は誰だろうと思い、調べてみた。かたせ梨乃、名取裕子、大竹しのぶの名前を確認。もし存命なら、今でも現役で活動していたと思われる。
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