PJ ハーヴェイ(PJ Harvey)@Zepp Haneda
開演前のBGM、音響系の中に時折動物の鳴き声が入っていて、早くも風変わりな雰囲気を醸し出していた。そして、ほぼ定刻に場内が暗転。バンド4人が先に登場し、少ししてPJハーヴェイ(ポリー)が姿を見せた。
ポリーはステージ前方に足を進め、場内を見渡すと一礼。少し微笑んでいるように見えた。そして、もっかの新譜であるアルバム『I Inside the Old Year Dying』の全曲を、曲順もそのままでの演奏がスタートした。
フロントのポリーを囲むように、バンドメンバーは、後方センターにドラム、両サイドにキーボード、向かって右端にもキーボードが設置。しかし、ドラマーを除く3人は1曲毎にパートを替えていた。セミアコやギター、マラカスなど。つまり、ベースレスだ。
ポリーも、ほぼ1曲毎にパートを替えていた。ヴォーカルオンリー、セミアコ、(たぶん)ジャズマスターなど。『Autumn Term』では、ステージ上のスペースを使い、舞うように踊っていた。白いロングドレス姿は、美しかった。ステージにはあちこちに木製の椅子が設置されていたが、どれもが彼女のために用意されたものだった。
サブスクが主流になり、リスナーは1曲毎に聴くようになっている昨今だが、『I Inside the Old Year Dying』は曲単体で聴くよりは、アルバムトータルでひとつの作品に出来上がっていると思える。音だけ聴いても幻想的なイメージがわき上がってくるが、ライヴの場で再構築されることで、そのイメージは一層増幅される。
バックドロップには、和紙をぐしゃぐしゃにしたような模様の壁紙があり、赤やブルー、シルバーなどのライティングによって、さりげなくステージセットの機能を果たしている。この人の場合、映像を流さずこの表現にとどめていることが合っている。
『A Noiseless Noise』の後、ポリーは袖に捌けていく。バンドの4人がステージ前方横一列に並び、『The Colour of the Earth』を。つまり、第2幕のはじまりだ。続く『The Glorious Land』で彼女も加わった。長い長いイントロに挿入されるトランペットは、SEだった。このライヴではサンプリングが何度か使われているが、コントロールしていたのはドラマーだと思われる。
第2幕はバンド色が強くなり、曲によってはベースやエレキバイオリンも使われていた。コーラスは、4人全員で担っていたと思う。ジョン・パリッシュのギターは時にはハードでソリッドになり、ポリーのヴォーカルと相俟ってよりエモーショナルになっていた。ポリーにとってのこの人は、パティ・スミスにとってのレニー・ケイのような存在だと思う。
『Down by the Water』の後、ポリーは「アリガトウ」と日本語で挨拶し、続けて英語で自身の想いや感謝の気持ちを伝えてくれた。メンバー紹介を経て、本編ラストは『To Bring You My Love』。アンコールは1曲にとどまったが、直前のオーストラリア公演とは異なる『Horses in My Dreams』だった。最後は、5人がステージ前方に横並びになり、手をつないで3度の礼をしてくれた。
セットリスト
『I Inside the Old Year Dying』全曲演奏
Prayer at the Gate
Autumn Term
Lwonesome Tonight
Seem an I
The Nether-Edge
I Inside the Old Year Dying
All Souls
A Child's Question, August
I Inside the Old I Dying
August
A Child's Question, July
A Noiseless Noise
The Colour of the Earth
The Glorious Land
The Words That Maketh Murder
50ft Queenie
Black Hearted Love
The Garden
The Desperate Kingdom of Love
Man-Size
Dress
Down by the Water
To Bring You My Love
アンコール
Horses in My Dreams
客電がついた後も、オーディエンスはかなり粘って更なるアンコールを求めたが、終演を告げるアナウンスがされたことで終了。しかし、素晴らしいライヴだったことに変わりはないし、揺らぐこともない。この後は、フェスで彼女のライヴを観られることを期待している。
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