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ボブ・ディラン(Bob Dylan)の伝記映画『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』を観た

ボブ・ディラン(Bob Dylan)の伝記映画『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』を観た

はヒッチハイクをしてニューヨークにたどり着き、ウディ・ガスリーを訪問。ウディの世話をしていた、ピート・シーガーに気に入られる。カフェやクラブで演奏するうちにレコード会社の目に止まり、自身の名を冠したファーストアルバムをリリースする。

ディランは、同じくカフェで演奏していたジョーン・バエズと知り合い、曲を共作したりステージでデュエットしたりしつつ、恋仲になる。一方で、シルヴィという女性とも恋仲に。音楽活動ではフォークの旗手的な存在に上り詰めるが、1965年になるとサングラスをかけ、エレクトリックに舵を切る。

ボブ・ディランの、デビュー前後から約5~6年を描いた伝記映画になる。フォークでスタートするも、時代の流れを察知してよりロック色を強めていく。年齢的には19歳から25歳の頃にあたり、劇的な変貌を遂げる時期を扱っている。

がボブ・ディランを演じ、見た目や仕草、話し方、声質は本人を彷彿とさせる。それだけにとどまらず、吹き替えなしで自らギターを弾いて歌も歌うという、徹底した役作りが素晴らしい。ピート・シーガーはで、この人もやはり自ら歌っている。

事実をもとにしてはいるが、すべてがそのままとは限らず、脚色もされていると思われる。バエズやシルヴィとの恋愛模様は、当人たちの心情も、時間軸も、本作の通りかはわからない。ほとんどのキャラクターの役名が実名になっている中、スージー・ロトロはシルヴィになっている。権利関係の問題だろうか。

そのシルヴィは、バエズはモニカ・バルバロ(『トップガン マーヴェリック』での女性訓練飛行士)、ディランのマネージャーのアルバート・グロスマンはダン・フォグラー、ピートの奥方トシは日本人の初音映莉子だ。

デビュー前後の主戦場にしていたカフェは、とにかく客との距離が近い。時代といえばそれまでだが、この距離感でディランやバエズを観られた人が羨ましい、と思わせる瞬間が数多くあった。それは俳優陣の演技に加え、古さを新しさとして描写した制作陣の手腕にもよると思う。

『Like A Rolling Stone』のレコーディングで、ギターを弾くためにスタジオに来たアル・クーパーが、間に合っていると断られその場でキーボードを弾く。間奏でのアルの鍵盤の音色にディランはじめバンドメンバーが反応し、場の空気が引き締まる。ほかにも、音楽小ネタがちりばめられているのが嬉しい。

先日発表された第97回アカデミー賞において、ティモシー・シャラメもエドワード・ノートンも受賞はならなかった。ほかの作品を観ておらず、ひいき目になっているのは重々承知の上だが、それでもこの人たちが栄誉を授かることができなかったのは残念だ。

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