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グリーン・デイ(Green Day)@Kアリーナ横浜

グリーン・デイ(Green Day)@Kアリーナ横浜

来日公演はサマソニ2012以来13年ぶり、単独となると2010年以来15年ぶりとのこと。アメリカのロックアーティストにしては、比較的コンスタントに来日していたイメージがあるバンドだが、今回は久しぶりだ。個人的にも、2010年のさいたまスーパーアリーナ公演以来になる。

定刻に客電が落ちると『Bohemian Rhapsody』が流れ、スクリーンはアリーナの客を映し出す。フルコーラスを経て、ラモーンズ『Blitzkrieg Bop』をバックにウサギの着ぐるみが登場し場内を煽る。そして、ステージ両サイドのスクリーンにバンドの歩みを駆け足で紹介する映像が流れ、ここでついにバンドが登場した。

新譜『Saviors』のトップでもある『The American Dream Is Killing Me』でスタート。爆音、閃光、パイロンから吐き出される炎、と、豪華ステージが稼動し、出だしからド迫力だ。ステージ上部とバックドロップには横長のスクリーンがあるが、それぞれ別の映像を流し、時折3人のアップを捉えてもいた。

演出だけでなく、もちろんバンドも全開状態だ。アリーナはオールスタンディングで、ステージ真ん中からフロアに短い花道ができている。ビリーはマイクスタンドを持って花道の先端まで足を進めると、そこでギターを弾きながら熱唱する。コール・アンド・レスポンスに手拍子にと、オーディエンスをノセる技はますます冴え渡っている。

ステージには、3人のサポートを含む6人で陣取っている。トレ・クールのドラムセットは一段高い台座の上に設置され、向かって右にはキーボード、左にはギター。前方向かって左にもうひとりのギター(恐らくこの人の方が古参)、右にはマイク・ダーント、センターはビリー・ジョー・アームストロングだ。

ギターが3人いる状態だが、ビリーが自らイントロのリフや間奏を弾くことも少なくなかった。ほとんど1曲毎に袖に下がってはギターを交換。5~6本を使い分けていたと思う。マイクはオレンジのツナギ姿だったが、序盤で黒ベースのいでたちに着替えていた。トレはパワープレイで分厚いビートを叩き出し、スティックをフロアに何度も飛ばしていた。

序盤は『Dookie』セットだが、『Welcome to Paradise』~『Longview』~『Basket Case』を連続で観られてしまうのが夢のようだ。特に『Basket Case』は、長らくライヴの終盤クライマックスに据えられてきたはずで、それが早くも演奏されてしまうことに、バンドが積み重ねてきた歴史の重みとプを感じさせる。

『When I Come Around』のとき、向かって右から「BAD YEAR」と書かれた飛行船が飛び立ち、アリーナの上をゆっくりと飛んでいた。ぐるっと回ってアリーナ中央に差し掛かったとき、ミニ飛行船をパラパラと落としていた。飛行船が気になり、ステージがもちろん気になり、と、視線は行ったり来たり。

『Know Your Enemy』は恒例の客上げで、選ばれたのはグリーンのシャツを着た女性。ビリーと何度かハグし、サビをシャウト。イントロで『I Fought The Law』をちらっとやっていた『Revolution Radio』は、来日が遠のいている時期にリリースされたアルバムのタイトル曲だ。『Minority』のときには、ビリーがバンドを紹介。『Brain Stew』では、出だしに『リンダリンダ』をちらっと。ビリー、知ってるんだ。

そして、いよいよ『American Idiot』セットだ。バックドロップにはジャケットのハートの手榴弾がバルーンとしてお目見えする。リリースは2004年で、来日公演は翌2005年。幕張メッセで観たが、あれからもう20年が経ったのかと思うと、灌漑深い。そして、この20年間に世界は正しい方向に進んでいたのだろうかと考えさせられる。

『Boulevard of Broken Dreams』ではサビをオーディエンスに歌わせ、『Are We the Waiting』では花道で日の丸を受け取って羽織るビリー。日の丸を準備するファンがいるのも、最早定番だろうか。『St. Jimmy』の激しさや、『Letterbomb』~『Wake Me Up When September Ends』のアルバム終盤の再現には、ぐいぐい引き寄せられるような気がした。

そして、『Jesus of Suburbia』だ。5つの曲から構成される9分オーバーの大作で、そしてがこの曲を作ったことの意味はとてつもなく大きいと感じている。個人的には、2つ目の『City of the Damned』に移るくだりの数秒間が、彼らが次のレベルに足を踏み出した瞬間のように思っている。パンクと大作、両極端で交わることのないはずだった表現を、融合させた瞬間だ。2010年の来日公演では、ワタシが観に行った日だけ演奏されず苦汁を飲まされたが、今回は観れた。

『Bobby Sox』を経て、全員がステージを後にする。しかしビリーだけ戻ってきて、『Good Riddance (Time of Your Life)』を切々と歌う。終盤になるとマイクとトレも駆けつけてビリーを囲み、紙吹雪が舞う中で静かにライヴが終了した。

セットリスト
1. The American Dream Is Killing Me
2. Welcome to Paradise
3. Longview
4. Basket Case
5. She
6. Strange Days Are Here to Stay
7. When I Come Around
8. Know Your Enemy
9. Revolution Radio
10. Dilemma
11. 21 Guns
12. Minority
13. Brain Stew
14. Jaded
15. American Idiot
16. Holiday
17. Boulevard of Broken Dreams
18. Are We the Waiting
19. St. Jimmy
20. Give Me Novacaine
21. Letterbomb
22. Wake Me Up When September Ends
23. Jesus of Suburbia
24. Bobby Sox
25. Good Riddance (Time of Your Life)

パンクから出発したが、最早王道ロックになりつつあるグリーン・デイ。年を取り、キャリアを重ねていく中で王道になっていくのは、必然かもしれない。がしかし、個人的にはじめて観た1998年の公演、あるいは第1回サマーソニックの、彼らが若い頃と変わっていないと思える瞬間が何度もあった。彼らの軸は、今でもあの頃のままなのだ。

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